この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ずっと傍に……
第29章 きっかけ…
「ヒナも落ち着いて…ちゃんと子供を愛して育ててるって分かってるから。友也くん?見てたら分かるよ。…千佳も分かってるよな」
間に入って取り持とうとする大地くんに、千佳は返事をしなかった。
私たちはそれぞれに心に確執を抱いたまま静かに時間だけが過ぎようとしていた。
だから、私は友也の存在をわすれていた。
千佳との言い合いに夢中になって友也の存在を忘れていた私は、友也が私の洋服を握り締めてきて初めて気がついた。
下を向いたままの友也を見て、嫌な予感しかしない。
「友也…。」
「…ママ…ごめんなさい…ボクがおりこうさんじゃないから…」
さっきまで楽しそうにしていた友也は泣くのを堪えていた。
「友也のせいじゃないよ…友也は何も悪くない…」
慌てて違うと声をかけても友也は首を横に振り、自分のせいだと口にする。
「でも…ボクのせいでママ…怒られちゃう…ボクがママの言う事聞かなかったから…」
何を言っても友也は自分が悪いと思って泣きたいのを我慢する。
きっと、この中にいたら涙を流して泣くこともしないだろう。