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ずっと傍に……
第29章 きっかけ…
「私ね…友紀也が亡くなって死ぬことばかり考えてた…電車に飛び込んだら死ねるかな…あのマンションから飛び降りたら死ねるかなって…実際に飛び降りようともしたし、踏切に手をかけたこともあった…」
淡々と話す私の手を咲は握り、今にも泣きそうな顔で話を聞いてくれた。
千佳は俯いたまま、どんな表情をしているのか分からない。
「それを止めてくれたのが、友也の父親だった…。誰とも会いたくなくて、誰とも関わりたくないのに…彼といることは苦痛じゃなかった…。あの時の私は、誰かが傍にいてくれないと生きては行けなかった…実際に、彼がいなかったら…きっと私はここにはいない」
当時の事を思い出しながら口にすると、あの時の言いようのない思いが蘇ってくる。
誰でもいいから傍にいて欲しくて、だけどそれは千佳や咲やママたちとは違って…知らない人だから…ううん…ユキだったから私は安らげた。
「…その相手が…どうして私たちじゃなかったの…」
千佳の言葉は震えていて、膝の上に置いている手がギュっと握られた。