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王家の婚礼(くすくす姫後日談・その2)
第3章 婚礼の午後
「はぁあ…」
「どうした?疲れたか」
婚礼の一連の儀式と昼餐が華々しく執り行われた後。
晩餐までの間の時間に、スグリ姫と婚約者は、衣装部屋に着替えに来ておりました。

「疲れたのもあるけど…レンブ、綺麗だったなーって。」
「ああ、そうだな。」
サクナは正直、居並ぶ数多の姫君や奥方達はもちろん、新婦のレンブ姫でさえ、スグリ姫ほどには美しくは無いと思っておりました。ではありますが、それを人に言えば単なる惚気と思われるでしょうし、そもそも婚礼の主役を差し置いて、それを言うのは憚られます。なのでスグリ姫のこの感想に対しても、心の中とは裏腹に、適当な相槌を打ちました。

「ハンダマの方は、ずーっとデレデレしてただけだったけどねっ」
「まあ、女の方が主役だって言うからな、婚礼は」
「お花も素敵だったわね…秋薔薇と薔薇の実、可愛かったな…」
「お前…」
サクナは、お前の式は春だろうから花は選り取り見取りだぞ、と言いいかけましたが、ある考えが頭を掠めて、途中で言うのを止めました。
「お前?…私?」
「ああ…お前、そろそろ着替えなくていいのか」
着替えのためにここに来たんだろ、と言われ、スグリ姫は下げられている衣装の方をちらっと見ました。
「ん、もうちょっと」
「もうちょっとそれで居たいのか」
確かに良く似合っているからな、とサクナは思いました。
姫は一旦普段の服に着替えて休み、晩餐の際にはまた別のドレスを着る予定になっておりました。
今しか着られないこのドレスを、もう少し着ていたいのだろうと、サクナは思ったのですが。

「私じゃなくて…」
「ん?」
姫は俯いてもじもじと衣装をいじり、上目遣いでこう言いました。
「もうちょっと、見てたいの。」
「…俺をか?」
姫はうん、と頷くと、近くまで来て、サクナの袖を摘みました。
「このあとの晩餐は、昨日のに着替えるんでしょ?あれもかっこよかったから、良いんだけど…でも、もうちょっとだけ」

そう言うと姫はサクナの腕をぎゅっと抱きこんで、少し不満げな顔をしました。
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