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舞い散る花びら
第1章 とつぜんの脅迫
「理事長がアールグレイが大好きでして、
最近いい香りの茶葉を見つけられたとかでぜひともこれをお出しするようにと
言われておりまして。」
と秘書の氷川がアイスティーの入ったグラスをさくらと浅井教授の前に置いた。
「とてもいい香りですね。」とさくらは答えた。
緊張で喉がカラカラになっていたさくらには温かい紅茶よりも
アイスティーのほうがありがたかった。
まだ理事長が見えていないのをいいことに、ストローに口を付け
3分の1ほど飲んでしまった。
ほどなくして、奥の扉からロマンスグレーの豊かな髪をした
濃紺のスーツ姿の50代くらいの男性と
少し白髪がめだつダークグレーのスーツを着た同じく50代くらいの男性が現れた。
さくらは記憶をたどり、ロマンスグレーの男性が理事長、
もう一人が学院長であることを思い出し、すっと席から立ち
「大学院、国際政治学部の野々宮さくらです。よろしくお願いいたします。」
と挨拶した。
ダークグレーのスーツ姿の男性が
「突然呼び出してしまって申し訳ないね。私は学院長の黒田だ。」
と言った。
濃紺のスーツの男性が「理事長の宮本だ。どうぞかけてください。」
と座るように促した。
秘書の氷川が二人の前に紅茶を置いて、末席に座った。
学院長の黒田が
「今回わざわざ君に来てもらったのはだね、
いろいろと聞いたいことがあってなんだが・・
昨年学会で発表をした論文。あれはすばらしかった。
その話を主にしたいと思ってきてもらったのだよ。」
宮本理事長が
「学会でも大変いい評価だったし、今後の研究も大変期待されている。
大変話題になったとともに、当学院の知名度をさらに上げる効果もあった。
本当に学院としては、野々宮さんの功績に感謝しているんだよ。」
と言った。
さくらは、学院トップ達からの賞賛にさらに驚き心臓がドキドキしてしまい
理事長おすすめというアイスティーをさらに少し飲み、
「こんなにお褒めの言葉をいただけるなんて、ほんとうに驚いています。
研究者として大変光栄ですし、今後の研究にもますます身が入ります。」
と答えた。
落ち着こうとしているのに、心臓はドキドキしっぱなしだった。