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管理人平沼
第13章 平沼の親友
本日「郷土史」の講義は休講。
分かっていた事とは言え、京子の中で心と時間がぽっかりと空いた。次のコマまで、まだ時間がある。それまで、京子は何をするまでもなく、気が付くと、平沼と一緒に行った大学近くの美術館の前に立っていた。
「開館中」
平日の昼間、京子は正門から吸い込まれるようにして入ってゆく。受付はおらず、近くに大きな絵画が掲げられていた。その目の前に休憩用のソファーがあり、私はここで先生と…。
「君が香川京子君だね?」
突然、背後から初老の紳士が声をかけてきた。ここの館長番田昌平である。
「はいそうです…。あっ、入館料ですね?」
京子が慌てて財布を手に取ると、番田がそれを制した。
「それは要らないよ。君は私にとって特別なお客様になるからね。」
番田は含み笑いをしつつ、京子を奥の部屋に案内した。そこは薄暗かったので、番田は窓を開けに外へ出た。京子の目がしだいに慣れ、周囲が明るくなる。著名人の絵画が一部あり、それ以外は全て番田が描く風景画である。
雄大な山を背景に農作業に勤しむ農家。大河に一人ポツンと釣り糸を垂れる太公望。いかにも素朴な田舎の風景。京子には平凡で退屈であった。
「わしの描く絵はどうかね?」
窓を開け終えた番田が再び声をかけた。
「ええ、まあ…。」
京子は曖昧に応え、話題を変えた。
「先生はどうしてこちらに美術館を建てられたのですか?」
落ちぶれているとはいえ、かつては絵の大家である。
「わしは生まれも育ちもずっとここにいて、画家として大成した頃に、自宅を美術館に改装したのだよ。だが、今は立ち行かなくてこの有様…。」
話してゆく内に、気が滅入ってしまったようで、今度は番田の方から話題を変えた。
「平沼とは幼馴染なのだが、あいつが初めて君をここへ連れて来た時には、ちょっと驚いたよ。俺と違ってやはり、もてるな。」
羽振りのいい親友を羨む番田。一方で「もてる」の一言に京子は平沼に軽い嫉妬を覚えていた。
分かっていた事とは言え、京子の中で心と時間がぽっかりと空いた。次のコマまで、まだ時間がある。それまで、京子は何をするまでもなく、気が付くと、平沼と一緒に行った大学近くの美術館の前に立っていた。
「開館中」
平日の昼間、京子は正門から吸い込まれるようにして入ってゆく。受付はおらず、近くに大きな絵画が掲げられていた。その目の前に休憩用のソファーがあり、私はここで先生と…。
「君が香川京子君だね?」
突然、背後から初老の紳士が声をかけてきた。ここの館長番田昌平である。
「はいそうです…。あっ、入館料ですね?」
京子が慌てて財布を手に取ると、番田がそれを制した。
「それは要らないよ。君は私にとって特別なお客様になるからね。」
番田は含み笑いをしつつ、京子を奥の部屋に案内した。そこは薄暗かったので、番田は窓を開けに外へ出た。京子の目がしだいに慣れ、周囲が明るくなる。著名人の絵画が一部あり、それ以外は全て番田が描く風景画である。
雄大な山を背景に農作業に勤しむ農家。大河に一人ポツンと釣り糸を垂れる太公望。いかにも素朴な田舎の風景。京子には平凡で退屈であった。
「わしの描く絵はどうかね?」
窓を開け終えた番田が再び声をかけた。
「ええ、まあ…。」
京子は曖昧に応え、話題を変えた。
「先生はどうしてこちらに美術館を建てられたのですか?」
落ちぶれているとはいえ、かつては絵の大家である。
「わしは生まれも育ちもずっとここにいて、画家として大成した頃に、自宅を美術館に改装したのだよ。だが、今は立ち行かなくてこの有様…。」
話してゆく内に、気が滅入ってしまったようで、今度は番田の方から話題を変えた。
「平沼とは幼馴染なのだが、あいつが初めて君をここへ連れて来た時には、ちょっと驚いたよ。俺と違ってやはり、もてるな。」
羽振りのいい親友を羨む番田。一方で「もてる」の一言に京子は平沼に軽い嫉妬を覚えていた。