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管理人平沼
第5章 女神が住む町
アパート管理人平沼は、郷土史家でもある。
 悠々自適に暮らす彼の唯一の趣味は、地元の風習や言い伝えを記録することだった。若い頃から集めただけに、今ではその数何千種類にも及んだ。
 パソコンでのホームページに、自らの趣味を載せると、当人が思った以上の反響や書き込みが寄せられた。地元の小中学校から講演の依頼や、出版社からの原稿の依頼もあった。
 中でも私の目を引いたのは、高校3年生の浅野千草からのメールであった。大学進学を機に、近くの物件を探しているとのことでもあった。若い女性に縁のない平沼にとって、彼女は女神様のように思えてきた。
 漸く暖かくなりかけた、3月、平沼は約束の時間に近くのファミレスに入ると、すでに彼女はいた。恐る恐る訪ねてみると、果たして浅野千草であった。
 桜がそこに咲いたかのような、ピンク色のジャケットをはおり、白い薄手のブラウスから、ブラジャーのラインが透けて見える。平沼の目線が千草の小さな膨らみに行く。彼女はあわてて胸元を隠した。
 「先生の知識を吸収して、今後の研究に活かしたいのです。それと、近くで部屋を探しています。」
 千草はジャケットのボタンをはめると、ハキハキと話してくれた。平沼の話を熱心に聞き、ノートに書き込んでいるようだった。
 「詳しい資料や写真は家にあるけど…、来る?」
 話の成り行き上、平沼がそう言うと、千草はついて来た。平沼は部屋に着くなり、散らかった部屋を片付け始めた。
 「突然のお邪魔ですみません。」
 千草は恐縮していた。部屋がある程度片付くと、平沼は卓袱台に向かい合って、千草にさっきの話しを続けた。図や写真があったおかげで、千草にはわかり易かったようだ。それ以降、千草は平沼のことを先生と呼ぶようになった。平沼は彼女のために物件を案内し、その日、彼女は帰っていった。 
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