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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第4章 夏の夜
作業場の掃除を始めた由香に、父が浮かんでいた。
バイパスが開通してから、早出がない限り、父は七時二十分に家を出る。そうすれば、三十分前には会社に到着できるようだ。
いつもなら余裕の父なのだが、この日の朝は違う行動をみせた。
早く起きて、パジャマのまま鏡を見る時間が長く、自分の服装に迷っているようだ。おそらく、仕事が終わってから奈々さんとデートに違いない。
由香は、台所から話しかけた。
「お父さん、今夜も奈々さんとデート?」
野上はなるべくなら、誰にも嘘を言わない主義である。
「由香、デートとはちょっと違う。普通のお食事会だよ。まあ、あとはテーブルを挟んで珈琲でも飲みながら世間話しだな」
「ふーん、普通のお食事会だったら、右手に持っている、半袖の白いラフな服装でいいと思う。それも似合ってる。作業服はいつもの所だからね。帰りは十二時くらい?」
「とんでもない、そんなに遅くならない。ほら、普通の話しだから、十一時までには帰る。ところでさっきの電話、健太か?」
「違うよ、海が荒れてるから今日は漁に出ない。まだ寝てると思う。電話は店長さんからだった。八時半になったら社長と一緒に市場に来てくれって。いい花木が出荷されてるから、セリで落とすんだって言ってた。早く持って帰って、お店の水槽につけなきゃいけないんだよね」
「朝早くから店長さんは忙しいんだな」
「夏場は七時からなんだけど、店長さんは六時には行ってる。月曜日と金曜日のセリは忙しいんだけれど、今日はいいのが入荷してるみたい」
「水曜日は忙しくないのか?」
野上はデートの件から、少しづつ話しを遠ざけようとしていた。
だが、勘は鋭い由香である。
(以前、私から聞いて知っているくせに)
「あのね、セリがあるのは週に三日。水曜日は出荷が少ないんだよね。月曜と金曜はみんな忙しい。でもさ、奈々さんとデートはいいと思う。私、応援してる」
ほうきを手にして掃除をしながら、由香にはいつかショップで亜紀たちと見た、店長さんらしき女性が浮かんでいるのであった。
野上は午後四時が近づき、明日の早出の者と、時間をボードに書き始めた。ドライバーはその都度、交代で順番が変わっていく。
四時半近くになり、帰り支度を終えているドライバーたちは、タイムカードの前に並び始めた。
バイパスが開通してから、早出がない限り、父は七時二十分に家を出る。そうすれば、三十分前には会社に到着できるようだ。
いつもなら余裕の父なのだが、この日の朝は違う行動をみせた。
早く起きて、パジャマのまま鏡を見る時間が長く、自分の服装に迷っているようだ。おそらく、仕事が終わってから奈々さんとデートに違いない。
由香は、台所から話しかけた。
「お父さん、今夜も奈々さんとデート?」
野上はなるべくなら、誰にも嘘を言わない主義である。
「由香、デートとはちょっと違う。普通のお食事会だよ。まあ、あとはテーブルを挟んで珈琲でも飲みながら世間話しだな」
「ふーん、普通のお食事会だったら、右手に持っている、半袖の白いラフな服装でいいと思う。それも似合ってる。作業服はいつもの所だからね。帰りは十二時くらい?」
「とんでもない、そんなに遅くならない。ほら、普通の話しだから、十一時までには帰る。ところでさっきの電話、健太か?」
「違うよ、海が荒れてるから今日は漁に出ない。まだ寝てると思う。電話は店長さんからだった。八時半になったら社長と一緒に市場に来てくれって。いい花木が出荷されてるから、セリで落とすんだって言ってた。早く持って帰って、お店の水槽につけなきゃいけないんだよね」
「朝早くから店長さんは忙しいんだな」
「夏場は七時からなんだけど、店長さんは六時には行ってる。月曜日と金曜日のセリは忙しいんだけれど、今日はいいのが入荷してるみたい」
「水曜日は忙しくないのか?」
野上はデートの件から、少しづつ話しを遠ざけようとしていた。
だが、勘は鋭い由香である。
(以前、私から聞いて知っているくせに)
「あのね、セリがあるのは週に三日。水曜日は出荷が少ないんだよね。月曜と金曜はみんな忙しい。でもさ、奈々さんとデートはいいと思う。私、応援してる」
ほうきを手にして掃除をしながら、由香にはいつかショップで亜紀たちと見た、店長さんらしき女性が浮かんでいるのであった。
野上は午後四時が近づき、明日の早出の者と、時間をボードに書き始めた。ドライバーはその都度、交代で順番が変わっていく。
四時半近くになり、帰り支度を終えているドライバーたちは、タイムカードの前に並び始めた。