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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第4章 夏の夜
野上は世間話しのように、河合に話しはじめた。
「俺が小学の低学年のとき、習字の時間があったんだよ。河合ちゃんにもあった?」
目を丸くして、野上は真面目な口調で言った。
長年仕事を共にしていれば、野上の性格はそれなりに分かっている。これはなにかある、と河合は感じたらしい。
「ええ、習字はありました。なにか?」
「習字の時間にちょっといたずらをして、若い女先生から字を百文字書くように言われたんだよ。で、そのとき俺は、のという字を書きはじめたんだよ。丸に近いから簡単だからさ。友だちにも筆を借りて、左右に一本づつ持って、口にも一本咥えて書いていたら、先生からいやらしいから止めなさいって怒られたんだよ。河合ちゃんは、そんなことない?」
野上が話し終えたとき、後ろの方で香織がクッと笑った。
いつもなら話しに乗ってくる彼女が、この話しには入ってこない。おそらく意味は伝わったようである。
一方、河合はピンときたらしいのだが、
「いや、自分はおとなしかったから、そんなことはないです」
だが河合は含み笑いを見せている。いかがわしい行為は把握できたに違いない。
河合は見た目からして真面目で、新婚間もない男だった。彼の妻は二十歳そこそこで可愛く見える。夜の主導権は妻に握られているようだ。
野上は、これで河合のセックスライフはご奉仕一辺倒から逆の立場へと、少しは夜の関係が公平になるように思えた。新妻に尻をセクシーに回させることなどは、そのうち閃くだろう。香織と河合に教えることができて良かった。
その頃、由香は花屋のエプロンを着けて、バイト先で忙しく働いていた。今夜は生け花教室の曜日なのである。
作業場の長い台の上には、何本ものドウダンツツジが置かれていた。それを適度な長さに切り分けているのは、社長の息子の店長だ。台の向こうでは彼の奥方が、店員の女性と切り花を担当している。
高校生のときから、この店でバイトをしている由香は手慣れていた。
店長が切り分けた寸法の違う三本を、輪ゴムで止める。切り花も三本で止め、それぞれ、ダンボール箱に丁寧に詰めていく。
店にお客さんが訪れれば、対応に出る。要望に合わせた花束を造ることもある。由香には楽しい仕事だった。
箱バンに、花材とそれを運ぶ台車を積み込んだあと、店長は市民センターへと配達に出掛けて行った。
「俺が小学の低学年のとき、習字の時間があったんだよ。河合ちゃんにもあった?」
目を丸くして、野上は真面目な口調で言った。
長年仕事を共にしていれば、野上の性格はそれなりに分かっている。これはなにかある、と河合は感じたらしい。
「ええ、習字はありました。なにか?」
「習字の時間にちょっといたずらをして、若い女先生から字を百文字書くように言われたんだよ。で、そのとき俺は、のという字を書きはじめたんだよ。丸に近いから簡単だからさ。友だちにも筆を借りて、左右に一本づつ持って、口にも一本咥えて書いていたら、先生からいやらしいから止めなさいって怒られたんだよ。河合ちゃんは、そんなことない?」
野上が話し終えたとき、後ろの方で香織がクッと笑った。
いつもなら話しに乗ってくる彼女が、この話しには入ってこない。おそらく意味は伝わったようである。
一方、河合はピンときたらしいのだが、
「いや、自分はおとなしかったから、そんなことはないです」
だが河合は含み笑いを見せている。いかがわしい行為は把握できたに違いない。
河合は見た目からして真面目で、新婚間もない男だった。彼の妻は二十歳そこそこで可愛く見える。夜の主導権は妻に握られているようだ。
野上は、これで河合のセックスライフはご奉仕一辺倒から逆の立場へと、少しは夜の関係が公平になるように思えた。新妻に尻をセクシーに回させることなどは、そのうち閃くだろう。香織と河合に教えることができて良かった。
その頃、由香は花屋のエプロンを着けて、バイト先で忙しく働いていた。今夜は生け花教室の曜日なのである。
作業場の長い台の上には、何本ものドウダンツツジが置かれていた。それを適度な長さに切り分けているのは、社長の息子の店長だ。台の向こうでは彼の奥方が、店員の女性と切り花を担当している。
高校生のときから、この店でバイトをしている由香は手慣れていた。
店長が切り分けた寸法の違う三本を、輪ゴムで止める。切り花も三本で止め、それぞれ、ダンボール箱に丁寧に詰めていく。
店にお客さんが訪れれば、対応に出る。要望に合わせた花束を造ることもある。由香には楽しい仕事だった。
箱バンに、花材とそれを運ぶ台車を積み込んだあと、店長は市民センターへと配達に出掛けて行った。