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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第4章 夏の夜
 セックスを考え、ソファに腰を下ろしている野上は、自分でも照れくさくなるほどバスタオルが突き上った。
 奈々は彼を見下ろして目を合わせた。そして突き上がるバスタオルにも目を向けた。
 口もとに手を添えた奈々は、彼を二度見してくすくす笑った。
「じゃあ、入れてくる」
 野上は照れくさい顔を見せず、落ち着いて答えた。
「……待ってる」
 彼女がドアの前に立ったとき、二人は再び目を合わせているのであった。

 奈々が寝室をあとにしたあと、体を起こした野上は、開け放されたドアの向こうの気配を探った。
 キッチンは見えないのだが、コーヒーを入れているようだ。彼はバスタオルに隠していた電動歯ブラシを手にするのだった。
 ソファに座り直した野上は、手早くパッケージから電動歯ブラシを取り出した。セットしようとしたとき、テーブルの下にころころっと乾電池が転がった。
 そのとき奈々は、タオルで手を拭っている。
 懸命に手を伸ばす野上なのだが、乾電池までは届かなかった。スリッパを手にしても届かない。テーブルの向こうに回るしか方法はないようだ。
 奈々は、玄関の鏡に自分を映していた。髪の毛を全体的に整え、前髪をちょっと下に引っ張ってみる。アヒル口を作ってみる。鏡に微笑みかけて、横目で横顔も確認した。胸を揉むようにしてバスタオルを整えた彼女は、寝室に向かうのだった。
 乾電池をセットし終えた野上である。彼はドアの様子を伺いながら、素早く移動して、枕の下に忍ばせた。だがパッケージはテーブルの上にある。
 寝室に入った奈々の目に、野武士のように上半身裸で姿勢を正し、ソファに腰を下ろしている野上が見えた。
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