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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第5章 花火大会
 野上と同世代で、いつも骨材を運んでくる運転手が、納品書を手に、「お疲れさま」と事務所に現れた。
「お疲れさまです」と、野上は返した。香織は運転手を見て、「お疲れさまでした」と返事をして、伝票に印を押している。
 ホワイトボードを見た運転手は、「香織ちゃん、来週の月曜も忙しいんだね」と言った。
 伝票を渡し終えた彼女は、「そうですね、森下さんも忙しいですね」とホワイトボードにちらっと目を向けた。そのあと彼に、「冷たい麦茶飲みます?」と話しかけたた。
「じゃあ、仲間を待つ間、ご馳走になろうかなあ」
 伝票を胸のポケットにしまった彼は、誰もが自由に座るソファに腰を下ろした。
 野上はプラントが映るモニターを見て、香織にも目を向けている。
 だがいくら注視していても、香織が話す相手が玉川以外の男だと、いつもと変わりなかった。玉川が現れたときに魅せる、きらきらしたような眼差しも、尻を疼かせていると思う太ももの擦り合わせも、全くないのであった。
 椅子にゆったりともたれた野上の格好を見て、運転手が話しかけた。
 彼は森下、野上より二歳年上である。
「野上さん、今夜は花火大会だね。行ったりする?」
(花火大会の夜なのか──)
 野上に、夜空に散らばる色とりどりの明かりを浴びて、ベッドで悶える奈々が浮かんだ。
「いや、この年になると行かないですよ。若い頃は楽しくて、よく行ったものです。森下さんは?」
「自分も同じですよ。子どもたちは行くんですけどね」
 と森下は、若い頃の自分を思い出しているかのような、哀愁感のある笑みを頰に浮かべた。
 やがて、玉川たちが到着しはじめた。
 野上と同じように、森下たちも、香織と玉川の関係に気づいているのかもしれない。だが誰も、そのことに関して口にしなかった。
 野上は、数あるドライバーの職種の中で、仲間とみなしたダンプカーの運転手同士は結束力が強いと感じている。彼らは日常で冗談は言うのだが、口は固いと思えた。
 仲間が揃った後、森下を先頭にプラントを順番に後にし始めた彼らを見て、それもダンプ仁義だろうな、と思う野上であった。

      (二)
 仕事を終えた野上は、岬周りの帰り道を選んだ。落ち着いてメールを書ける場所があるのだ。
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