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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第5章 花火大会
 野上は、切り立つ崖が海面まで続く広場に軽トラックを停めた。ここは見晴らしがいい。彼方まで穏やかな海が広がっていた。
 海原を前にして、野上はメールを書き始めた。
 奈々はメールを待っていたようだ。野上が送ったあと、直ぐに返事は届いた。
《お仕事、お疲れさま。私、四時に終わって帰って来ていますよ。今夜がすごく楽しみです》
《じゃあ、今から迎えに行くから、着替えて待っていて。俺の車の助手席に乗せてあげるよ。ラフな服装でいいから》
《分かった。じゃあ、後で》

 アパートの前に軽トラックが停まった。二階のベランダから、奈々の声がした。
「今、いく」
 軽トラックの窓から顔を出した野上は、「慌てなくていいよ。時間はあるんだから」と言った。
 少しして、駐車場に停めた車の隣りを通り、足首が見える黒っぽいパンツに白い靴、小さなバッグを手に…白いシャツを着た奈々が、「待った?」と現れた。
 隣りに立つ奈々をじっくりと見た野上は、いい女だな、と思った。そんな奈々が、数時間後には性奴隷のように自分の意のままになる。早く紹介を済ませ、花火を見ながら奈々を悶えさせたくなる野上であった。

 野上が帰り着いたとき、由香の車はなかった。
「娘はもうすぐバイトは終わると思う。お茶を入れるから、奈々ちゃん上がって」
 彼女は初めて訪れて緊張している様子だった。だがそれも、一度顔を合わせて話しをすれば直ぐに慣れる、と野上は思っている。
「お邪魔します」と奈々は、靴を揃えた。
 リビングに案内したあと、野上は麦茶を入れている。彼はテーブルに運びながら、ソファで待っている奈々に近所の絵里花のことを話し始めた。
「あのね、言っていた生意気な女の子なんだけど、奈々にいろいろ質問すると思うんだよ。人見知りしないって言うか、ちょっと目を三角にして話してくるんだよ。まあ、適当にあしらっていればいいから」
(──目を三角?)
 彼の話しに、奈々は興味を覚えた。幼い頃の自分も、確かにそんなことを言われ記憶がある。奈々は、絵里花と仲良くなれる気がした。
「野上さん、絵里花ちゃんって元気印そのものな感じなんですか」
「はい、麦茶」と言って、奈々の隣りに野上は腰を下ろした。「そうなんだよ、分かる? 俺が思うに、彼女は幼稚園で無法者だと思ってる」
 目を丸くして言う野上に、奈々はくすくす笑った。
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