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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第5章 花火大会
野上と奈々が話しているとき、チャイムが鳴った。
「きっと絵里花だよ。花火大会に行くって言っていたから。奈々ちゃん、適当にあしらえばいいから」
野上はリビングを後にするのだった。
二人の話し声が、奈々に聞こえてきた。
「おお、浴衣なのか、絵里花ちゃんよく似合ってる。さあ、上がって、ジュース入れてあげる。由香はもう直ぐ帰ってくるからさ」
「おじさん、お邪魔します」
玄関から、礼儀正しい女の子の声がした。
小さな布袋を手にした絵里花がリビングに現れたとき、ソファに座っている奈々と目が合ったようだ。彼女はぴたりと立ち止まり、奈々をじっと見ていた。
野上は、そんな二人の様子を見ていた。
すっと立ち上がった奈々は彼女に近づき、両膝に手をついた。
「絵里花ちゃん、初めまして。私、奈々です。野上さんから聞いていました。よろしくね」
二人を見ている野上は、奈々の笑みは相変わらず可愛いと思った。そんな奈々に比べ、絵里花は目を三角にして、相変わらず無法者の眼差しだった。
「初めまして、絵里花です。由香ちゃんから噂は聞いていました。私こそよろしくね」
奈々に見せる、大人びた挨拶の絵里花の笑みは、野上にはどうしても、うわべだけは礼儀正しく振る舞う無法者としか思えなかった。
それに、由香から聞いた噂とは──。野上は、それも気になる。
「奈々ちゃんはソファに座っていなよ。俺、ジュース入れるからさ」
野上はこっちに来るようにと、絵里花に手招きをしてキッチンへと向かった。
奈々は麦茶をひと口飲んで、二人を見ている。
絵里花が見上げていることから、彼は何か話しをしているようだ。
「絵里花ちゃん、由香から噂を聞いているって、どんなこと?」
「教えてあげたいんだけど、由香ちゃんから秘密だって言われてる。だから、おじさんでも言えない」
「そ、そうだよな。約束は守るためにある。じゃあ、こうしよう。これから花火大会に行くだろ? そのとき、もし健太が由香の手を握ろうとしたら、絵里花ちゃんが間に入って、二人の手を握るんだ。ほら手を出して。五百円あげる。これでアイスでも買いなよ」
奈々が見ていると、お小遣いを渡しているようだ。だが、布袋にしまった彼女は、彼を見上げてもう一度手を出している。
奈々は、幼い頃の自分にも、確かにそんなことはあった──と、絵里花のことが、ちょっと面白く思えた。
「きっと絵里花だよ。花火大会に行くって言っていたから。奈々ちゃん、適当にあしらえばいいから」
野上はリビングを後にするのだった。
二人の話し声が、奈々に聞こえてきた。
「おお、浴衣なのか、絵里花ちゃんよく似合ってる。さあ、上がって、ジュース入れてあげる。由香はもう直ぐ帰ってくるからさ」
「おじさん、お邪魔します」
玄関から、礼儀正しい女の子の声がした。
小さな布袋を手にした絵里花がリビングに現れたとき、ソファに座っている奈々と目が合ったようだ。彼女はぴたりと立ち止まり、奈々をじっと見ていた。
野上は、そんな二人の様子を見ていた。
すっと立ち上がった奈々は彼女に近づき、両膝に手をついた。
「絵里花ちゃん、初めまして。私、奈々です。野上さんから聞いていました。よろしくね」
二人を見ている野上は、奈々の笑みは相変わらず可愛いと思った。そんな奈々に比べ、絵里花は目を三角にして、相変わらず無法者の眼差しだった。
「初めまして、絵里花です。由香ちゃんから噂は聞いていました。私こそよろしくね」
奈々に見せる、大人びた挨拶の絵里花の笑みは、野上にはどうしても、うわべだけは礼儀正しく振る舞う無法者としか思えなかった。
それに、由香から聞いた噂とは──。野上は、それも気になる。
「奈々ちゃんはソファに座っていなよ。俺、ジュース入れるからさ」
野上はこっちに来るようにと、絵里花に手招きをしてキッチンへと向かった。
奈々は麦茶をひと口飲んで、二人を見ている。
絵里花が見上げていることから、彼は何か話しをしているようだ。
「絵里花ちゃん、由香から噂を聞いているって、どんなこと?」
「教えてあげたいんだけど、由香ちゃんから秘密だって言われてる。だから、おじさんでも言えない」
「そ、そうだよな。約束は守るためにある。じゃあ、こうしよう。これから花火大会に行くだろ? そのとき、もし健太が由香の手を握ろうとしたら、絵里花ちゃんが間に入って、二人の手を握るんだ。ほら手を出して。五百円あげる。これでアイスでも買いなよ」
奈々が見ていると、お小遣いを渡しているようだ。だが、布袋にしまった彼女は、彼を見上げてもう一度手を出している。
奈々は、幼い頃の自分にも、確かにそんなことはあった──と、絵里花のことが、ちょっと面白く思えた。