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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第5章 花火大会
「おじさん、健太が由香ちゃんの手を握ろうとするのは、一度だけだと思う?」
「ん、そうだな。じゃあ、もう五百円あげるよ。これで綿菓子でも買いなよ。だけど、このことは誰にも言っちゃだめだ」
「うん、分かった」
「じゃあ、ジュース入れてあげるから、奈々のお姉さんと待っていて」
絵里花は大切そうに布袋にしまっている。そして満面に笑みを浮かべた。
奈々は、二人の金銭の授受まで一部始終を見ていた。いったい二人はどんな話しをしていたのだろう。あとで、野上さんに聞いてみようかな、と思うのであった。
三人がリビングで話しているときである。
「あっ、由香ちゃんが戻った」と絵里花は言った。
本当かな、と野上が耳を澄ませていると、やがて聞き慣れたエンジン音が聞こえてきた。いつものように、バックで車庫に入っている様子だ。そしてエンジンは止まった。
絵里花はすごいな、と関心する野上である。子どもの聴力はどこまでなのか──壁ひとつくらいなら、と思えるのだった。
「ただいまー」と由香の声がした。
見慣れない靴を目にして、直ぐに由香は気づくんだろうな、とそんな野上である。
そのときだった。すっと立ち上がった絵里花が、
「おじさん、任せて。私が紹介してあげる」
どんなふうに紹介しょうかと迷っている野上にとって、救世主たる絵里花だった。野上は、無邪気な無法者は強いな、とも思った。
絵里花から奈々を紹介された由香は、あのときショップで目にしたことは、健太の言っていたことが正確だったと、この場で納得できたのである。
絵里花は、立ったまま話しをしている二人に、
「あの、奈々ちゃんも由香ちゃんも、座って待っていて? もう直ぐ健太も着くから」
驚いたように、「絵里花ちゃん、聞こえる?」と、野上はきいた。
「うん、車の音で分かる。今、カーブを曲がって坂にかかったところ。由香ちゃんの車の音より、健太のほうが、ちょっと高い音。おじさんの軽トラックも、音で分かるんだよね」
「すごいなあ、絵里花ちゃんは……」
と、野上は話している。
少しして、全員揃った。
社交的な絵里花のおかげで、今夜は助かったな、と野上は心の中で感謝しているのだった。
シャワーを浴びて浴衣に着替えた由香は、
「奈々さん、この次はゆっくり遊びにきて」
「分かった。私のアパートにも招待するね」
「ん、そうだな。じゃあ、もう五百円あげるよ。これで綿菓子でも買いなよ。だけど、このことは誰にも言っちゃだめだ」
「うん、分かった」
「じゃあ、ジュース入れてあげるから、奈々のお姉さんと待っていて」
絵里花は大切そうに布袋にしまっている。そして満面に笑みを浮かべた。
奈々は、二人の金銭の授受まで一部始終を見ていた。いったい二人はどんな話しをしていたのだろう。あとで、野上さんに聞いてみようかな、と思うのであった。
三人がリビングで話しているときである。
「あっ、由香ちゃんが戻った」と絵里花は言った。
本当かな、と野上が耳を澄ませていると、やがて聞き慣れたエンジン音が聞こえてきた。いつものように、バックで車庫に入っている様子だ。そしてエンジンは止まった。
絵里花はすごいな、と関心する野上である。子どもの聴力はどこまでなのか──壁ひとつくらいなら、と思えるのだった。
「ただいまー」と由香の声がした。
見慣れない靴を目にして、直ぐに由香は気づくんだろうな、とそんな野上である。
そのときだった。すっと立ち上がった絵里花が、
「おじさん、任せて。私が紹介してあげる」
どんなふうに紹介しょうかと迷っている野上にとって、救世主たる絵里花だった。野上は、無邪気な無法者は強いな、とも思った。
絵里花から奈々を紹介された由香は、あのときショップで目にしたことは、健太の言っていたことが正確だったと、この場で納得できたのである。
絵里花は、立ったまま話しをしている二人に、
「あの、奈々ちゃんも由香ちゃんも、座って待っていて? もう直ぐ健太も着くから」
驚いたように、「絵里花ちゃん、聞こえる?」と、野上はきいた。
「うん、車の音で分かる。今、カーブを曲がって坂にかかったところ。由香ちゃんの車の音より、健太のほうが、ちょっと高い音。おじさんの軽トラックも、音で分かるんだよね」
「すごいなあ、絵里花ちゃんは……」
と、野上は話している。
少しして、全員揃った。
社交的な絵里花のおかげで、今夜は助かったな、と野上は心の中で感謝しているのだった。
シャワーを浴びて浴衣に着替えた由香は、
「奈々さん、この次はゆっくり遊びにきて」
「分かった。私のアパートにも招待するね」