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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第1章 それぞれの思惑
リビングを後にする由香に、野上はいま一度言った。
「由香、本当に秘密だからな」
振り返った由香は、目を丸くして真面目な顔をみせている。
「うん、絶対に秘密、約束する。お父さん、明日は早出だったね。お弁当と朝ごはんは、いつものように作っておくから。おやすみ」
階段を上がりながら、由香は昨年を思い出している。
父と一緒にスマホを新しく買い換えるとき、ショップで見かけていた三十代半ばくらいの女性が、おぼろげながら浮かぶのだった。
一方、野上は送信履歴と着信メールを確認してニヤリとした。
(由香のやつ、こんなメールを送っていたんだ)
《奈々さん、メールありがとう。お互いに仕事があるから、時間が合うときならオーケーですよ》
《お返事、嬉しいです。私、休む前だから今はベッドからメールしているんです。あのスーパーには、よく立ち寄るんですか? 私のアパートからは、車で五分くらいかな。時間が合えば、そこで待ち合わせるのはどうですか?》
野上はメールを読んで、奈々は一人暮らしだと察した。だが自分のような中年に、数回しか会ったこのない彼女が、どうしてメールを送ってくるのか疑問に思えた。彼は、自分の考えを偽りなく奈々に聞いてみようと決めるのだった。
《ちょっと疑問なんだけど。どうして会ったばかりなのに、声をかけてくるのかな? そこが分からないんだけど? 君は若くて可愛いから、わざわざ俺じゃなくてもいいように思うんだよ》
直ぐにメールが届いた。
《野上さんは正直なんですね。会ったばかりなのに、そうですよね。じゃあ、こうしません? 何もしない約束で、私のアパートに来るのはどうかな。もしかしたら野上さん、私の秘密を知ると驚くかもですよ》
意味ありげなメールだった。奈々に興味が湧く野上である。返信には、時間が合えば。ということを伝えて、メールを終えた。
そのころ由香は、健太とメールのやり取りをしている。
《健太、時間をみつけてつき合って? 坂井さんがどんな人だったか、もう一度見てみたいから》
《だけど、野上のおじさんは秘密なんだろ? やっぱりそれは悪いよ》
《もう、秘密だから気になるんじゃない。時間があるとき、亜紀ちゃんと三人で見に行くからね、分かった?》
と送るのであった。
「由香、本当に秘密だからな」
振り返った由香は、目を丸くして真面目な顔をみせている。
「うん、絶対に秘密、約束する。お父さん、明日は早出だったね。お弁当と朝ごはんは、いつものように作っておくから。おやすみ」
階段を上がりながら、由香は昨年を思い出している。
父と一緒にスマホを新しく買い換えるとき、ショップで見かけていた三十代半ばくらいの女性が、おぼろげながら浮かぶのだった。
一方、野上は送信履歴と着信メールを確認してニヤリとした。
(由香のやつ、こんなメールを送っていたんだ)
《奈々さん、メールありがとう。お互いに仕事があるから、時間が合うときならオーケーですよ》
《お返事、嬉しいです。私、休む前だから今はベッドからメールしているんです。あのスーパーには、よく立ち寄るんですか? 私のアパートからは、車で五分くらいかな。時間が合えば、そこで待ち合わせるのはどうですか?》
野上はメールを読んで、奈々は一人暮らしだと察した。だが自分のような中年に、数回しか会ったこのない彼女が、どうしてメールを送ってくるのか疑問に思えた。彼は、自分の考えを偽りなく奈々に聞いてみようと決めるのだった。
《ちょっと疑問なんだけど。どうして会ったばかりなのに、声をかけてくるのかな? そこが分からないんだけど? 君は若くて可愛いから、わざわざ俺じゃなくてもいいように思うんだよ》
直ぐにメールが届いた。
《野上さんは正直なんですね。会ったばかりなのに、そうですよね。じゃあ、こうしません? 何もしない約束で、私のアパートに来るのはどうかな。もしかしたら野上さん、私の秘密を知ると驚くかもですよ》
意味ありげなメールだった。奈々に興味が湧く野上である。返信には、時間が合えば。ということを伝えて、メールを終えた。
そのころ由香は、健太とメールのやり取りをしている。
《健太、時間をみつけてつき合って? 坂井さんがどんな人だったか、もう一度見てみたいから》
《だけど、野上のおじさんは秘密なんだろ? やっぱりそれは悪いよ》
《もう、秘密だから気になるんじゃない。時間があるとき、亜紀ちゃんと三人で見に行くからね、分かった?》
と送るのであった。