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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第2章 初体験

 時計を見た野上は、河合に指示を出して、マイクのスイッチを入れた。
 野上の配車の連絡は、場内とドライバー室にまで放送で流れる。
「チャーター26号車、そのあと5号車」
 事務所から、ホッパーの下に26号車が着くのが見えた。
 プラントはコンピューター制御である。事務所に設置された画面には、プラント内部まで映っている。機器に数値などを入力するだけで、納品書には詳細と行き先まで印字される。
 その間にも、ミキサー車は次々に戻ってくる。
 事務所からは、30号車が場内に戻ってきて、無線のマイクを握っているドライバーの横顔が見えた。
「30号車、戻ってきましたよ」
 彼の声は弾んでいるように聞こえた。追加など飛び込みの配送が無い限り、予定表を見て自分の出番は分かっているらしい。
 会社での野上は、営業無線では誰に対してでも丁寧である。
「30号車、洗って下さい」
「了解!」
 自分の出番は終わりだと、確信しているような彼の声だった。

 野上が数台出した後。それが本日の最終便、次は新人の若いドライバーである。
 野上は、納品書を取りに事務所に現れた山田に、
「午前中に行った現場なんだけど、たぶんこれでラストだから時間がかかる。終わっても直ぐ帰ってはだめだぞ。ポンプ車を洗うから、それをタイコに受けてから帰ってくるんだぞ?」
 山田は不安げな顔を見せて、
「心配だな、僕に出来るでしょうか」
「簡単だから大丈夫。青いランプが点灯していても、空気が入らない程度に生コンを流すといい。まああれだ、ラストに近くなると赤ランプも点いたりして遅くなるから分かる。あとはポンプ車の運ちゃんが教えてくれるから、な?」
「はい、行ってきます」
 野上は不安げな彼を送り出してから、終われば意気揚々と戻ってくるのだろうと思った。
 河合は骨材の画面と野上を見て、
「簡単でしたよ。山田はそんな顔で戻ってくるんでしょうね。ちょっとタイヤショベルで押してきます」
 とニヤリとした。
「だろうな、新人ってそんな顔をするもんな」
「ですね。押し終われば、ホッパーの所にショベルを着けておきます」
 野上はスイッチを入れて、プラントのドラムを洗い始めた。

 終わりが近づいても、骨材を運んでくるダンプカーは来る。
 野上が、香織の彼氏らしいと睨んでいる玉川は違う会社だが、専属のように骨材を運んでくる若者だった。
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