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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第2章 初体験
「あのね、今日は大漁だって。それで山下のおじさんが、ご近所にもだって。みんなで配りに行ってくるから」
ドアを閉めたあと、由香は直ぐに浴室に引き返した。そしてサッシ越しに、
「テーブルに置いてるお父さんのスマホ、着信らしいよ? 仕事かもしれないから、見てあげようか?」
野上は直感で、奈々からだと悟った。
「由香、それはいい。早くカツオを持って行ってあげなさい。みんな晩ごはんの支度もあるから、遅くなってもいけないからね」
浴室に反響している父の声に、由香はクスッと微笑んだ。奈々さんからだろうな、と察しがつくのだ。
直ぐに野上は風呂から上がった。体を拭いているとき、近所から由香たちの声が微かに聞こえてくる。野上には、外の状況が手に取るように分かった。
「健太君、いつもありがとう。でかいカツオだね……」
「健太、上がっていけば? 冷たいジュース入れてあげる」
生意気な小娘、絵里花の声も聞こえた。
(健太の奴、あんな小娘まで手なずけて、奴は女ったらしだ)
やがて由香と亜紀たちの話し声は、遠ざかっていった。
三人は歩きながら、話題は野上と奈々のことだった。だが健太は、ちょっと無口である。
「あのね、ついさっきお父さんにメールが届いてた。開くとばれちゃうから見なかったんだけど、あれは絶対に奈々さんだと思う」
亜紀は暮れゆく空を見て、
「なんか、そんなふうに知り合っていくっていいよね。ちょっとロマンチック。私、そう思う」
「でしょ?」
「うん」
袋に入れたカツオを手にしている健太が、
「だけどさ、やっぱりショップに覗きに行くのはどうかな。おじさんに悪いよ」
「健太、覗きってそれは失礼。見届けてあげるんじゃない。みんなの将来のためだよ、ねっ亜紀ちゃん?」
「そうだよ、お兄ちゃんは私たちの気持ち、全然分かっていないんだから……」
野上が浴室から出ると、テレビは消されていてリビングは静かだ。メールを開くと予想通り奈々だった。
《お仕事お疲れさま。話していなかったんだけど、私の仕事はシフト制なんです。今日から週末まで十時まで続いて、週休二日制だよ。それに、野上さんの休日に私の休日、合わせていいですか? 休日を選ぶことが出来るんですよね。今夜は十一時くらいから、私、メールオッケーですよ。昨夜ね、新しい写メ撮ったから送っちゃいます。後で少しだけ、お話ししていい?》
ドアを閉めたあと、由香は直ぐに浴室に引き返した。そしてサッシ越しに、
「テーブルに置いてるお父さんのスマホ、着信らしいよ? 仕事かもしれないから、見てあげようか?」
野上は直感で、奈々からだと悟った。
「由香、それはいい。早くカツオを持って行ってあげなさい。みんな晩ごはんの支度もあるから、遅くなってもいけないからね」
浴室に反響している父の声に、由香はクスッと微笑んだ。奈々さんからだろうな、と察しがつくのだ。
直ぐに野上は風呂から上がった。体を拭いているとき、近所から由香たちの声が微かに聞こえてくる。野上には、外の状況が手に取るように分かった。
「健太君、いつもありがとう。でかいカツオだね……」
「健太、上がっていけば? 冷たいジュース入れてあげる」
生意気な小娘、絵里花の声も聞こえた。
(健太の奴、あんな小娘まで手なずけて、奴は女ったらしだ)
やがて由香と亜紀たちの話し声は、遠ざかっていった。
三人は歩きながら、話題は野上と奈々のことだった。だが健太は、ちょっと無口である。
「あのね、ついさっきお父さんにメールが届いてた。開くとばれちゃうから見なかったんだけど、あれは絶対に奈々さんだと思う」
亜紀は暮れゆく空を見て、
「なんか、そんなふうに知り合っていくっていいよね。ちょっとロマンチック。私、そう思う」
「でしょ?」
「うん」
袋に入れたカツオを手にしている健太が、
「だけどさ、やっぱりショップに覗きに行くのはどうかな。おじさんに悪いよ」
「健太、覗きってそれは失礼。見届けてあげるんじゃない。みんなの将来のためだよ、ねっ亜紀ちゃん?」
「そうだよ、お兄ちゃんは私たちの気持ち、全然分かっていないんだから……」
野上が浴室から出ると、テレビは消されていてリビングは静かだ。メールを開くと予想通り奈々だった。
《お仕事お疲れさま。話していなかったんだけど、私の仕事はシフト制なんです。今日から週末まで十時まで続いて、週休二日制だよ。それに、野上さんの休日に私の休日、合わせていいですか? 休日を選ぶことが出来るんですよね。今夜は十一時くらいから、私、メールオッケーですよ。昨夜ね、新しい写メ撮ったから送っちゃいます。後で少しだけ、お話ししていい?》