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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第2章 初体験
 敬語混じりの文面には、随所に要求も書いてあった。野上はメールを読み返して、自分に自惚れる訳ではないのだが、奈々はいま直ぐにでも俺に抱かれたくてたまらないのだろう、とそんな気がした。
 新たな写メを見れば、自分の考えは確信に変わるものだった。意味ありげな紳士的メールによるものかもしれないが、ベッドが写っている。
(長いまつ毛と火照ったように潤んだ目、唇。これは昨夜撮ったオナニー直後か?)
 奈々の女の本質は、自らに自信があるからこそ、こんなふうに大胆なのか──。
 野上はそんなふうに再確認できる気がした。自分が淫らな要求をしたとき、彼女は恥ずかしがる素振りを見せてはいても、そのあと股を開いて見せてくれるように思えた。

 その頃、由香たち三人は、近所に配り終えて話しながら戻っている。
「あれだけ喜んでくれると、俺も釣ったかいがあったな」
「そうだね、だけど逆に缶ビール貰っちゃったね。ところで健太、魚市場には出荷した?」
 健太は、由香に得意げな口調で返した。
「配ったどころじゃないよ。由香ちゃん、俺は漁師だぜ」
 由香はそれを聞くと、安心した顔を見せて二人に話し始めた。
「あのさ、後でショップに奈々さんを見に行かない?」
 亜紀は乗り気だ。
「私、案がある。あのね、タブレットを見る素振りで行くのよ。胸に名札が付いているから、きっと分かるよ。由香ちゃん、奈々さんはどんな人?」
「去年見たとき、三十代半ばに見えた。たぶんあの人だと、私、そんな感じがする」
「その年齢だと、店長さんかな?」
「うん、去年の感じでは、かもしれない」
 二人の話しを聞いている健太は、乗り気ではなかった。
「だけど、ショップって営業時間は長いからシフト制だろ? 奈々さんは居ないかもしれないよ」
 由香は直ぐに反論した。
「あのね、何事もチャレンジしないと分からないじゃない。それに、お爺ちゃんにも見てくるって言っているんだから」
「そうだよお兄ちゃん、マイナーな考えよりも何事もメジャー的に進んで行かなきゃ。それに、お父さんたちに言っちゃだめ。直ぐにおじさんに電話してばれるから。これはお爺ちゃんと私たちの秘密だからね……」
 喋り始めた由香と妹の話しに、健太は入れそうになかった。
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