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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第2章 初体験
一方、野上はリビングのソファに深々と腰を下ろし、奈々の写メを見ていた。
(やはり、どこかで会った気がする)
野上が考えているとき、リビングの向こうから由香たちの声が聞こえる。帰ってきたようだ。
直ぐに玄関から、「晩ごはんは作ってる。温めるだけだから上がって」と由香の声がした。続いて「お邪魔します」と、健太と亜紀の声だった。
野上は素早く携帯をダイニングのテーブルに置いて、ソファに戻った。
いつも可愛い亜紀だ。上がってくると野上を見て、
「おじさんこんばんは。ほら見て、お返しに缶ビール貰っちゃった。冷えてるから後で注いであげる。肴はカツオを料理してからだね」
亜紀が近くにいるときには、野上はそれなりに健太に接する。すっと立ち上がり、
「亜紀ちゃん、相変わらず可愛いなあ。ビールかい? じゃあ俺はうまいビールが飲めるな。健太、ご馳走になるよ」
と野上が健太に近づくと、彼は直立不動だった。
「はい、こんばんは。そう言ってもらえると嬉しいです」
野上は、健太の首筋あたりをじっくりと見た。キスマークが無いことに少しは安心できた。
「山ちゃんは釣りが上手いからな」
「はい、そうです」
ぎこちない健太に、由香は気づいたようだ。直ぐに話しかけた。
「健太、早くカツオを料理して? 私たちは温め直して運ばなきゃいけないんだから」
(由香、その女房のような口の利き方はなんだ?)
健太が手を洗い始めたとき、奴の隣りで由香はタオルを手にしていた。野上は言葉では言い表せない目をして、一部始終を見ていた。
台所で由香と亜紀に挟まれている健太なのだが、手際は良かった。直ぐに三枚に下ろして中骨を切り取り、半分は皿に乗せてラップをかけた。
「由香ちゃん、食べきれないと思うから、これは冷凍にして、明日はたたきにするといい。ネギを刻んでポン酢か塩だね」
笑みを浮かべる由香は関心するように彼を見上げて、「健太って凄い。おじさんに習ったの?」と言った。「お兄ちゃん、腕を上げたね」と、亜紀も話しかけている。
「いや、親父のを見ているから、何とかできた」
と、控え目な健太だった。
野上は腕を組み、テーブルの椅子に腰を下ろして見ているのだが。二人の女から見上げられている、ヒーローのような健太が羨ましく思えた。
(カツオを三枚にしてラップに包むことなら、俺でも簡単なんだよ)