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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第1章 それぞれの思惑
奈々の美脚を目の前にして、そのような過去を振り返ってみても、野上は昭和生まれの中年で、大学生の娘もいる。自分が若かった頃のあの美穂ように、奈々があのようなシチュエーションに応じてくれるとは思えなかった。
野上の勤めている会社は、岬の向こうの楓生コンである。そこでの彼は、工場長とミキサー車の配車を兼務していた。
現在の野上は仕事と娘一筋だといつも念頭に置いていた。ただ、彼は女嫌いではなく、目の前の奈々の体には魅力を覚えている。しかし自分の下心が上手く彼女と運んだ場合、娘に知れたなら大変な状況が浮かぶ。社会的な立場もある。彼女のご両親は──。そんなふうに先々を考えれば、面倒なことのように思えてしまうのだった。
買い物客はまだ多かった。数名の婦人が野菜を物色しながら近くまで来たとき、奈々は場所を譲って話し始めた。
「野上さんはスマホを携帯って言うんですね」
彼女は自分の唇からつま先まで体中を野上に見られているのは気づいているようである。恥ずかしさからなのか、話し終えると唇に笑みをつくった。
極上の体にその唇のすき間はちょっといやらしげだな、と野上は思った。
「携帯って言い方は変かなあ。俺は昭和生まれだから、携帯だよ」
とぼけたように言う野上を、奈々は姿勢よく立って見ていた。
野上は少し前、無意識のように太ももを擦り合わせた彼女の動きに気づいていた。伏し目がちに見ていると、やはり無意識だろうか尻が妖しげに横に動いてスカートの裾が揺れた。
「でも野上さんは、すごくお若く見えます。服装も素敵です。ショップの先輩たちは渋い系だねって言っていたんですよ」
「ほんとに? これは娘が選んでくれたんだよ、買い物には二人でよく行くからさ」
「仲がいいんですね。娘さん、すごくセンスいいです」
娘を褒められた気がする野上だ。まだまだ彼女の体を観察しながら話しをしていたい思いはあった。だが互いに買い物の途中なのだ。続きの話しを少しだけして、彼女とはそこで別れた。
そのとき彼女の横顔に、以前何処かで会ったことがあるのかな、と野上は思うのだった。
レジは数レーンある。並んでいる客層は様々だ。野上が会計を済ませる頃になっても、彼女は買い物の途中なのか近くに姿はなかった。
食材をレジ袋に入れている野上には、ついさきほどの好意的すぎる奈々が浮かんできた。
野上の勤めている会社は、岬の向こうの楓生コンである。そこでの彼は、工場長とミキサー車の配車を兼務していた。
現在の野上は仕事と娘一筋だといつも念頭に置いていた。ただ、彼は女嫌いではなく、目の前の奈々の体には魅力を覚えている。しかし自分の下心が上手く彼女と運んだ場合、娘に知れたなら大変な状況が浮かぶ。社会的な立場もある。彼女のご両親は──。そんなふうに先々を考えれば、面倒なことのように思えてしまうのだった。
買い物客はまだ多かった。数名の婦人が野菜を物色しながら近くまで来たとき、奈々は場所を譲って話し始めた。
「野上さんはスマホを携帯って言うんですね」
彼女は自分の唇からつま先まで体中を野上に見られているのは気づいているようである。恥ずかしさからなのか、話し終えると唇に笑みをつくった。
極上の体にその唇のすき間はちょっといやらしげだな、と野上は思った。
「携帯って言い方は変かなあ。俺は昭和生まれだから、携帯だよ」
とぼけたように言う野上を、奈々は姿勢よく立って見ていた。
野上は少し前、無意識のように太ももを擦り合わせた彼女の動きに気づいていた。伏し目がちに見ていると、やはり無意識だろうか尻が妖しげに横に動いてスカートの裾が揺れた。
「でも野上さんは、すごくお若く見えます。服装も素敵です。ショップの先輩たちは渋い系だねって言っていたんですよ」
「ほんとに? これは娘が選んでくれたんだよ、買い物には二人でよく行くからさ」
「仲がいいんですね。娘さん、すごくセンスいいです」
娘を褒められた気がする野上だ。まだまだ彼女の体を観察しながら話しをしていたい思いはあった。だが互いに買い物の途中なのだ。続きの話しを少しだけして、彼女とはそこで別れた。
そのとき彼女の横顔に、以前何処かで会ったことがあるのかな、と野上は思うのだった。
レジは数レーンある。並んでいる客層は様々だ。野上が会計を済ませる頃になっても、彼女は買い物の途中なのか近くに姿はなかった。
食材をレジ袋に入れている野上には、ついさきほどの好意的すぎる奈々が浮かんできた。