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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第2章 初体験
彼女からそんな呼び方をされたとき、健太は不利になることが多い。ハンドルを握る健太に、小学生だった頃の夏休みが浮かんでくるのであった。
──あの夏の日。
麦わら帽子を被った由香に、『ねえ健太くん、お願いがあるんだけど』と言われた。続けて話しを聞けば、『そのメダカ、ぜんぶちょうだい?』と奪われた覚えがある。
(ある夏休みには、蝉も一匹残らず奪われたんだよな)
まだまだ覚えはあるのだが。今夜は何だろう、と健太は助手席の由香を見て思った。
「お願い? なに?」
目を細くした彼女の口もとには、笑みが浮かんでいた。
ラジオからは、次の落語家が紹介された。三味線と太鼓の音が、由香の企みを後押しするかのように流れ始めた。
「あのね、今から町まで行って、コンビニで花火を買うのはどうかな。浜辺で花火っていいよね」
すぐに時計を見る健太である。続けて彼女の太ももを目にして、ミニスカートに気づいた。
「ちょっと遅いからだめだと思う。それに気づかなかったんだけど、ジーンズに履き替えないと、おじさんにばれると思う」
「ほんとだ。じゃあ、いいところで停めて。花火は次にする?」
「うん、絶対にそれがいい」
ラジオからは客席の笑い声が流れ、流暢な話しは続いていた。
健太はバイパスから少し外れて、周りを松に囲まれた広場に車を停めた。
メダカの一件以降、子どもの頃は別にして。由香を抱いてからの健太は、いやらしいことだけには彼女に勝てるような気がする。
辺りは暗かった。
「あっ健太、そこ触っちゃだめ……」
「ちょっとだけだから。このあと、帰り着くまでお口でして?」
「…………」
(五)
野上が時代劇を観ているとき、聞き慣れたエンジンの音が聞こえた。
どうやら帰ってきたようだ。野上が時計を見ると、いつもと同じくらいの時間だった。少ししてエンジン音は遠ざかり、玄関からは由香の気配がする。
上がってきた由香は、ソファに腰を下ろしている父を見て、
「お父さん、ただいま。私、シャワー浴びてくる」
「シャワー? ちょっと帰りが遅いんじゃないのか?」
野上は由香を観察するように見ているのだが、服装には乱れもなく、これといって変わったところはなかった。
すぐに由香は時計を見て、
「あっ、いやらしい。スイカを運ぶと汗をかくじゃない。だからシャワーなんだよ。わかる?」
──あの夏の日。
麦わら帽子を被った由香に、『ねえ健太くん、お願いがあるんだけど』と言われた。続けて話しを聞けば、『そのメダカ、ぜんぶちょうだい?』と奪われた覚えがある。
(ある夏休みには、蝉も一匹残らず奪われたんだよな)
まだまだ覚えはあるのだが。今夜は何だろう、と健太は助手席の由香を見て思った。
「お願い? なに?」
目を細くした彼女の口もとには、笑みが浮かんでいた。
ラジオからは、次の落語家が紹介された。三味線と太鼓の音が、由香の企みを後押しするかのように流れ始めた。
「あのね、今から町まで行って、コンビニで花火を買うのはどうかな。浜辺で花火っていいよね」
すぐに時計を見る健太である。続けて彼女の太ももを目にして、ミニスカートに気づいた。
「ちょっと遅いからだめだと思う。それに気づかなかったんだけど、ジーンズに履き替えないと、おじさんにばれると思う」
「ほんとだ。じゃあ、いいところで停めて。花火は次にする?」
「うん、絶対にそれがいい」
ラジオからは客席の笑い声が流れ、流暢な話しは続いていた。
健太はバイパスから少し外れて、周りを松に囲まれた広場に車を停めた。
メダカの一件以降、子どもの頃は別にして。由香を抱いてからの健太は、いやらしいことだけには彼女に勝てるような気がする。
辺りは暗かった。
「あっ健太、そこ触っちゃだめ……」
「ちょっとだけだから。このあと、帰り着くまでお口でして?」
「…………」
(五)
野上が時代劇を観ているとき、聞き慣れたエンジンの音が聞こえた。
どうやら帰ってきたようだ。野上が時計を見ると、いつもと同じくらいの時間だった。少ししてエンジン音は遠ざかり、玄関からは由香の気配がする。
上がってきた由香は、ソファに腰を下ろしている父を見て、
「お父さん、ただいま。私、シャワー浴びてくる」
「シャワー? ちょっと帰りが遅いんじゃないのか?」
野上は由香を観察するように見ているのだが、服装には乱れもなく、これといって変わったところはなかった。
すぐに由香は時計を見て、
「あっ、いやらしい。スイカを運ぶと汗をかくじゃない。だからシャワーなんだよ。わかる?」