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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第3章 仕込む
   第三章 仕込む

     (一)
 八月初旬、火曜日。
 朝から続く曇り空は、午後になると今にも降り出しそうな気配に変わっていた。
 楓生コンから五キロほど上流には、ひとつの工事現場がある。野外で生コンを扱う現場関係者は、空模様が気になっている様子である。

 その頃、野上は机にひじをついて、事務所の窓から空を眺めていた。護岸工事を考えれば、天候が気になる。しかしぼんやり空を見ていると、昨夜届いた奈々のメールが、彼に浮かんでくるのだった。
《明日、午後から雨かもしれませんね。夕方から会うのはどうですか。真夏の雨って素敵だと思いません?》
 野上は直接言えないことでも、メールだと照れを感じなかった。興味深いセックスの話しがすぐに始まった。指でオナニーをするようになったのは、大学生のときからだと教えてくれた。
《そうだったのか、変なことを聞いちゃってゴメンね。だけどさ、あそこに触らせて? 俺は明日、そんなことを言うかもしれないよ》
《私、恥ずかしいです。それに私の……》
 彼女は自分でオナニーをしてはいるが、セックスの経験がないと言うのは本当だろう。それに、いやらしく見える性器なのか──。
 野上は仕事に変更がない限り、夕方にはスーパーで奈々と会う約束を交わしていた。
(都合よく土砂降りの雨になれば、車の中でもう一度、じっくりと性器について聞いてみようか──)

 空を見ている野上に、隣りから河合が話しかけた。
「野上さん、含み笑いをしているけど、何かいい事あったんですか」
 野上は内心、ハッとした。
 河合はニヤリとしている。一部始終を見ていたようだ。
「いや違うんだよ。あと少しで今日も無事に終わるなって、だからだよ」
「いやー、あの含み笑いはちょっと違っていましたよ? でも降らなくて良かったですね」
「そうだな。現場も雨が降らなくて一安心だな」
 そのとき、護岸工事の現場から無線が入った。
「25号車終わりました。1リューベくらい余りました」
 それを聞いて、野上には現場とその後が浮かんだ。
「25号車、今日の予定は終わりです。そこからだとコンクリート砕石は近くだね。いつものようにそこに捨てて下さい」
「はい、25号車了解」
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