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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第1章 それぞれの思惑
一週間前、奈々は職場で野上の履歴を確認している。
彼はバツありで、隣り町で娘さんと暮らしていることも調べて分かった。スマホを預かったときには、女性のメール相手は娘の由香さんだけだった。
買い物を済ませた奈々は出口に向かいながら、いまの野上さんに女は絶対にいないはず。それにあれだけ私の体を見ていたから脈ありだね、と、自信はあった。
自動ドアが開くとき、奈々はどきどきしていた。ドアの向こうで彼は待っていて、そのあとベッドで大きく脚を広げられ、何度となく抱かれることを期待していたからだった。
彼が白い軽トラックに乗っているのは、職場に現れたときから知っていた。しかし外に出たとき、彼の姿はなく軽トラックもなかった。
立ちつくす奈々の目には、空きが目立ちはじめた駐車場と、レジ袋を手にして話しながら車のドアを開ける、自分と同世代のカップルらしき姿だった。
アスファルトの熱を含む微風が、彼女の黒髪と、スカートの裾を微かに揺らした。
(どういうこと? あれだけ彼に餌を撒いたのに。抱かせてあげるって、言っているようなものなのに──)
しかし今、頰に髪を少し乱して駐車場を眺める奈々の目は、何かを企んでいるのか強気で鋭かった。
(でも大丈夫。野上さんのアドレスは知ってる)
彼が独身と分かっている以上、自分のもにすると決めている奈々は、今後の様々なことを考え始めているのだった。
(二)
生け垣に囲まれた野上家の車庫には軽トラックと、その隣りにワインレッドの国産の四輪駆動車が停まっていた。
由香からは、前々から小さな車がいいと野上は聞かされていた。
しかし昨年、由香が免許を取得すると同時に、この車なら絶対に安全だからと説きふせ、半ば強引にそれを買い与えた。娘には甘く、彼は由香の言うことには殆ど無抵抗である。しかし娘の身の安全、それだけは譲れなかったのだ。
夕食が終わると、いつもと変わりない夜だった。
窓辺には新しい花が生けられている。
由香は、高校生のときから学校が長期の休みに入ると、近所の花屋でアルバイトをしていた。現在もそれは続き、窓辺の花はそこで貰ったものだ。
幼稚園の頃の由香は近所の草花を飾っていた。彼女が花を飾るのは幼い頃から続いていた。
彼はバツありで、隣り町で娘さんと暮らしていることも調べて分かった。スマホを預かったときには、女性のメール相手は娘の由香さんだけだった。
買い物を済ませた奈々は出口に向かいながら、いまの野上さんに女は絶対にいないはず。それにあれだけ私の体を見ていたから脈ありだね、と、自信はあった。
自動ドアが開くとき、奈々はどきどきしていた。ドアの向こうで彼は待っていて、そのあとベッドで大きく脚を広げられ、何度となく抱かれることを期待していたからだった。
彼が白い軽トラックに乗っているのは、職場に現れたときから知っていた。しかし外に出たとき、彼の姿はなく軽トラックもなかった。
立ちつくす奈々の目には、空きが目立ちはじめた駐車場と、レジ袋を手にして話しながら車のドアを開ける、自分と同世代のカップルらしき姿だった。
アスファルトの熱を含む微風が、彼女の黒髪と、スカートの裾を微かに揺らした。
(どういうこと? あれだけ彼に餌を撒いたのに。抱かせてあげるって、言っているようなものなのに──)
しかし今、頰に髪を少し乱して駐車場を眺める奈々の目は、何かを企んでいるのか強気で鋭かった。
(でも大丈夫。野上さんのアドレスは知ってる)
彼が独身と分かっている以上、自分のもにすると決めている奈々は、今後の様々なことを考え始めているのだった。
(二)
生け垣に囲まれた野上家の車庫には軽トラックと、その隣りにワインレッドの国産の四輪駆動車が停まっていた。
由香からは、前々から小さな車がいいと野上は聞かされていた。
しかし昨年、由香が免許を取得すると同時に、この車なら絶対に安全だからと説きふせ、半ば強引にそれを買い与えた。娘には甘く、彼は由香の言うことには殆ど無抵抗である。しかし娘の身の安全、それだけは譲れなかったのだ。
夕食が終わると、いつもと変わりない夜だった。
窓辺には新しい花が生けられている。
由香は、高校生のときから学校が長期の休みに入ると、近所の花屋でアルバイトをしていた。現在もそれは続き、窓辺の花はそこで貰ったものだ。
幼稚園の頃の由香は近所の草花を飾っていた。彼女が花を飾るのは幼い頃から続いていた。