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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第4章 夏の夜
   第四章 夏の夜

      (一)
 川沿いから眺める生コン会社の建物が、夏の雨に煙っている。昨日からの雨は、一夜明けた午後になっても降り続いていた。
 ドライバーが集まる部屋は広い。コンクリートの床には各自のロッカーと、幾つか並んだテーブルとパイプの椅子、冷蔵庫とガスコンロ、台所まで備わっている。畳が敷かれたスペースには将棋盤とテレビ、雑誌もみられる。
 運転手たちはのんびりとしていた。本日唯一の仕事、屋内の現場は午前中に終わっているのだ。テレビからは芸能界の噂が流れ、台所では野上差し入れのスイカを切り分ける者もいた。
 隣りにある車庫は、大型車が四台停っても余裕の広さだ。タイヤ交換と簡単な整備などは、各自がそこで行う。コンプレッサーとインパクトが響き、話し声がすることから、数名の運転手はタイヤ交換などを行っているようだ。

 雨合羽を着た河合が、骨材を確認するために事務所を後にしたことを野上は知っていた。
 それまで電話を受け、事務をとっていた香織がホワイトボードに近寄った。
「野上さん、明日は忙しいですよ。今夜中にお天気は回復するようです」
 香織が背中を向けて書き始めたとき、野上は椅子に腰を下ろしたまま、横目で彼女を見て話しはじめた。
「日付が替わる頃には回復しているようだね。仕事があるのはいい事だ」
「そうですね」と書きながら、彼女の尻が動いている。
(ほう、香織は色気が増したな。もしかしたら昨夜も玉川とセックスを?)
 彼は、自分がそうであったように、若い者同士が肉体関係を結ぶと、快楽を求めてあらゆる性行為を経験してゆくものだと確信しているようだ。
(シックスナインのとき、香織は下だろうな。次には咥えたまま体を反転させて、玉川の口に性器を押し当てるのかも知れん──)
 一方、出社するまでの香織は、昨日スーパーで目撃したことを、野上に教えてもらう考えだった。だが、恋愛の邪魔をしてはいけないのだと、思い直していた。
 野上は時間を確認した。もうすぐ玉川が着く頃である。
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