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湯上がり慕情 浴衣娘と中年ピンチ君
第4章 夏の夜
恋人同士はベッドの上で平等であることが、先々まで上手くいくのだと野上は思っている。
ただ、玉川に電動歯ブラシを教え、香織になにも伝授しないでいれば、セックスにおいて彼女は尻を突き上げたまま、電動歯ブラシを手にする玉川に攻められっぱなしのようにも思える。
野上には、ベッドで絡み合う今夜の二人が浮かんだ。
(ここは、お口を回すことを香織に教えておけば、少しは平等で──。快感に対するそれぞれの度合は、それぞれのご奉仕の度合によって、公平だろうな)
明日の朝、香織がどんな唇をして事務をとっているのか、野上はそれも楽しみだった。
ダンプカーの運転手同士は、仁義に厚い者が多いようだ。
玉川はスイカを食べながら、同僚たちが到着するのを待っているらしい。彼らの分は皿に残している。
スイカを片手に、玉川は話しかけた。
「野上さん、牽引は難しいですか。社長から取るように言われたんですよね。会社の下村さん、自分は年だから誰かに取らせろって。会社で牽引を持っているのは社長と下村さんだけだから。俺に運搬車も乗ってくれって」
「玉ちゃんは車両系と大特も持っているから、それで社長に言われたんだな。バックと縦列さえ覚えれば簡単だよ。トレーラーの場合、シャーシは二軸でも三軸でも、後ろ側が軸になるんだ。バックのときに素早く大きく逆にハンドルを切れば、ベッドとシャーシが簡単に折れるから、すぐにハンドルを真っ直ぐになおす。あとはハンドルを直しながら、タイヤの後ろ側に合わせて押し込んでいく感覚だな。左バックは寝台の窓から見ていれば分かる。狭い道とかフェリーの中は、特に素早くだよ」
玉川には、狭い道をガードマンの案内で、重機を積んだトレーラーで現場までバックしていく格好いい自分が浮かんだ。
「なるほど、素早くですね」
「そう。男らしくグッとハンドルを切って、さっと直す。それで合格だよ。女性のパンツの扱いと一緒だから」
そのとき香織の薄目と玉川のニヤリとした顔に、ちょっと失言したかな、と野上は思うのだった。
玉川らはスイカを食べ終えると、「ご馳走さまでした」と、隊列を組んで帰って行った。
河合が事務所に戻ってきた。野上はこの時を待っていた。男を喜ばせるお口の特訓を、香織に伝授しようと考えているからだ。