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Eternal
第4章 :jealousy-嫉妬-
 社会性について説明しろと言われればこんなにも答えが出てくるのに、では社会性を身につけろと言われると頭の中では理解しているのに身体と心がついてこない。でもこの焦りを、『ヒト』に対する嫉妬を彼女にぶつけたって仕方がないのに。彼女だって最初は俺の相手になる為だけにこの首都に強制的に連れて来られたなんて考えていなかったはず。彼女だっていきなり俺という存在が現れて驚いて戸惑って、今はこの状況に慣れるだけでも精いっぱいなのに。俺が彼女の腕から自分の手を離そうとした時、ふいに全身に温もりを感じた。
「え……?」
 俺の頬に彼女の髪の毛の一部が触れている。首には細くて白い腕が回されていることに気づくのに少々時間がかかった。そして今、自分が彼女に抱き締められているということにも。そして俺の後頭部に首に回されていた彼女の方掌が当てられて、静かに上下に優しく擦られる。
「感情って今のあなたがしていることなんですよ。どうしたら『ヒト』になれるって、あなたは既に私と同じ『ヒト』じゃないですか。私だってこれから辛いこともあるだろうし、反対に楽しいこともあるでしょう。『ヒト』って死ぬまでずっと感情について勉強していかなきゃならないんです。感情の答えは毎回異なるんです。『ヒト』である私にとっても難しくて正しい答えを出すことができない時もあるし間違えることもあります。完璧って何ですか? 私たち『ヒト』だって完璧じゃないんです。ずっと不完全……」
 でもね――
 彼女は俺を抱きしめたまま耳元で囁いてくる。
「前にも言ったように、失敗をしたり悩んだり苛々したり泣いたり、そんなことを繰り返しながら常に新しいものを自分の中に蓄えていくんです。『ヒト』だけではなくて、生き物全体が途上なんですよ。つまり、死ぬまでずっと枝分かれした道を歩き続けるんです」
 俺は更に強く抱き締められる。まるでぐずった赤子をあやすかのように、もともと同じ場所にあった彼女の片方の手と後頭部に添えられていたもう片方のそれがそこから静かに滑り落ち、背中を撫で始めた。そんな彼女に甘えたくて、俺の両手も彼女の背中に回る。そして自分の胸に引き寄せるように強く抱き締めると、彼女の左肩に額を乗せて小さく息を吐き出していた。


真面目に恋をする男は、恋人の前では困惑したり拙劣であり、愛嬌もろくにないものである。


 カント-ドイツの哲学者
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