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Eternal
第5章 :Reverie-夢想-
 今日は引っ越しの日だ。朝早くに目覚めた私はベッドの上で大きく伸びを起こすと壁に掛かっているカレンダーを見る。三十日の箇所には赤色で大きく囲んであって”引っ越し”と女子らしくない書き込み。これは過去からあるもので、今では部屋のセキュリティが何でも教えてくれるが、これが各家庭からなくなったことはないらしい。そして私の鞄の中にいつも入れているシステム手帳。今日ではコンピュータ管理でできる予定もわざわざ手帳に書き込むという習慣は古くからあるもので、私も幼い頃から養育者が使用していた為に自然と使うようになっていた。新しいものを取り入れながらも古きものを大切にするという伝統は決して悪いものではないと思う。何もかもコンピュータに頼ってしまっていたら、私たち生き物に与えられた手で何かをするということがなくなってしまうし、頭で考えるということもなくなってしまうだろう。二日前から始めた料理で例えれば、料理をしなくても出来上がった料理が目の前にあるから献立をまず考えない。献立を考えた後に必要な食材を覚えて買いにも行かない。時間も気にしない。では料理に費やしていた時間で何をしているかというと、何をするでもなく、ただぼんやりとしながら好きな時にご飯を食べるというような感じだ。しかし二日間料理をして思った。
 忙しいけれども充実していた。気になる相手がどのような表情でこの料理を食べてくれるのだろうか? 美味しいと言ってくれるだろうか? まず味見をしてみてなかなかいけてる、なんて。この時間は彼の反応を想像しながら胸を高鳴らせ、失敗をしないか妙に不安に駆られながら過ぎていった。
 彼も今日も寝不足だろうか? さすがに今日は引っ越しの日だから何の料理も作ってはあげられない。私は昨日彼が帰ってから部屋の大掃除をしたのだ。
「一応、飛ぶ鳥跡を濁さずともいうしね」
 そう呟きながら床を拭く。これだって部屋で指示を出せばコンピュータが勝手に掃除機能を使用してやってくれる。しかし一年近く過ごしたこの部屋は自分の手で美しくしてから出たいと思いながらした。そしてローテーブルの上を拭こうとして私の雑巾を持つ手が止まる。
 食べ残しのポトフ。彼は一口目で美味いと言ってくれた。しかしその後は食べてくれなかった。最初は口に合わなかったのかと考えたが、実はそうではなかったようだ。
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