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Eternal
第5章 :Reverie-夢想-
 彼は早く『ヒト』になりたがって焦っている。でも私から見れば彼だって『ヒト』なのだ。何が彼に焦りを起こさせるのか私にはよく理解できなかった。しかし彼の知り合いの男性の言葉を思い出してそれが原因なのだろうかと再び考え込んだ。
 私は自分が生まれた瞬間を知らない。普通はそうだが彼は違う。誕生した時には既に大人の姿でそこから人生が始まった。私は彼にもその知り合いの男性にも自分と同じ『ヒト』であると伝えたが、それは間違いだったかもしれないと考える。
 冬にしては柔らかな光が部屋の中に差し込む。私たち『ヒト』は光を浴びて明るい気分になったり、雨が降ると心に靄がかかったような気分になったりと天候で左右されることが多いが、彼らのような『E地区』の者たちにはそうならない。ただ彼はどうやら雨が苦手らしいのが昨日のフードの被り方で何となく分かったが。『ヒト』は生まれる前から母親の胎内で春夏秋冬のうちの半分と朝昼晩のリズムを感じ続けるのだろう。それは生まれてからでも同じで『ヒト』の体内には自然の温度計と時計がきっと存在していると彼の知り合いの男性は言いたかったのか。
 『ヒト』にとって自然のリズムは大切なものだと。話を逸らされたのには説明するのが面倒くさかったのと、それを説明すればするほど自分たちにはないものが『ヒト』は持っていることを改めて知らされて嫉妬の感情に苦しめられたからに違いない。
「用意はできているから、あとは身だしなみだけかな」
 もうすぐミスコンが始まる。それは毎年行われている催し物で、大学では祭りのような盛り上がりになるらしい。大学の庭には多くの屋台が立ち並び、大学サークルの催し物もかなり楽しいと聞く。彼はその日の仕事は休みだろうか?
「引っ越しが無事に済んだら誘ってみようかな?」
 私は再び伸びを起こした後にベッドから出て洗面所へ歩いて行く時、部屋の中から電話があるとの知らせが響き渡ったー。
「おはようございます」
「やあ、おはよう」
「どうしたんですか、こんな朝早く……」
 男は爽やかな笑みを湛えたまま目の前の女の口元に清潔な布を優しく押し付けた。皮膚に焼け付くような強い刺激。頭の中がクラリと歪みを起こした瞬間に部屋の中に押し込まれてどこかを痛めつけられた。
「残念だが君じゃないんだ。君の友人が彼女の為になる」
 だから囮になってもらうよ……
 と最後に呟いて――。
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