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Eternal
第2章 :Discomfort-違和感-
 いつの時だったか、その写真を見たことのある私は、自分が花嫁になった姿を想像しながら、愛し合うという感情がどのようなものなのかも同時に想像した。
 クラスメイトの男女のように絶えず笑い続けているのだろうか? いや、その人生の中にはきっと悲しみも怒りもあるのだろう。そして悩みも、疑問も―― そして私は深く溜め息を吐きながら、『ヒト』がいかに複雑な感情を持ち合わせている生き物であるかを実感したのだが、このように全てに対して尽くされて暮らしている私には、そのような感情がこの身体の内側のどこから湧き出てくるのか全く理解できなかったのだが、違和感の中にこれだけは確実に理解できた。
 私たちがこの島国に『ヒト』としての感情、感覚、そしてあの教師が放った自由というもの全てを抑止されている。なぜならば、泣けと言われても泣くことができないし、笑えと言われても笑えない。怒れと言われてもその原因がない上に、悩めと言われても悩むことといえば教科書の中にある理解し難いアルファベットや数字が綴られている公式の解き方や、この島国の言葉とは全く異なる言葉のニュアンスくらいだからだ。疑問を持てと言われても、今の私には少しの違和感を抱くだけで、それを深くまで解き明かそうとは思いもしなかったから。いや、しなかったのではない。恐らくさせないようにされているのだろう。
「とうとうあの二人、やっちゃったらしいよ」
 クラスメイトの男女が付き合い始めたと聞いたあの日から数日が過ぎた時、私はそれを教えてくれたクラスメイトに伝えられた。未経験の私でもクラスメイトが放った「やる」という言葉の意味はよく理解している。つまりは「セックス」という男女の交わりのことだ。しかしそれを教えられたからといって、私は何も答えることができず、ただ驚いた表情を見せることしかできなかった。
「あれってどんな感じなんだろうね?」
 クラスメイトが私の目の前で想像に耽てみようとするが、
「うーん、よく分からないね」
 すぐに諦めの表情で溜め息を吐いた為に、私は少しだけ口元を緩ませた。なぜだろうか、このような他愛ない会話を今、楽しいと思ったのだ。そして理解した――
 楽しいという感情がどのようなものかを――
 クラスメイトの男女が付き合い出したその後から私たちのクラスは少しずつだけれど、明るい雰囲気を作り出していたのだと思う。
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