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第6章 Reunion-再会-

　彼の嫌味のような雰囲気の言葉に男性は小さな溜め息を吐き出した。
「いや、ある人物の力で島国から出ることはできたんだが、やはり彼女をちゃんとしてやらないと思ってな……」
　毎日悔やんでばかりだったと男性は最後にそう呟く。それを聞いた私は一体誰に殺されたのかと尋ねた。
「私の研究所に出入りしていた男なんだ。その男の相手が彼女だった。その男と彼女の関係は上手くいっていなかったんだ。『E地区』の男たちが細胞から作られていることは承知の通り。その細胞も一人の『ヒト』からの提供ではない。つまり様々な『ヒト』からの寄せ集めだ。それには理由がある。一つは『ヒト』のように血液型が決定されないようになっている。『ヒト』はA型、B型、O型、AB型に分かれていて、O型以外は同じ血液型の相手にしか輸血をすることができない。それを私は『E地区』の男たちの血液型を『ヒト』の全てに輸血をすることができるような発見をした。それが細胞を寄せ集めた結果、成功をした……」
　ここで立ち話も何だ、長くなりそうだから場所を変えようと男は私たちに伝えて、それに納得をした私と彼は父親である男とともにアンダーグラウンドから地上へと向かった――。


　『ヒト』の中でも天才中の天才と呼ばれた男の話はいつ聞いても興味をそそる。俺たちの血が『ヒト』の血液型全てに提供できることは理解している。『E地区』の男たちにしかない血液型は”Evolved blood”と名付けられ、頭文字を取って”E型”と呼ばれている。血液が一つの型にはまることがないように細胞もまたそうなるように研究が続けられてきた。その結果はもちろんいい方向に傾き成功したのだが、やはり時にはそうならないものも出てくる。女性の相手だった男がそうだと男は言った。
　今鬼才だと言われるその男は誕生した時から様々な才能を発揮した。そして外見上も社交的であり、性格も穏やかに見え、『ヒト』の研究者たちや養育者たちはこの島国の権力者たちからその男を成功事例として高く評価されたのだ。しかし先ほどから男が言う様々な『ヒト』の細胞が及ぼす影響。それは時に『ヒト』の一部にもあるような多面性を持ち合わすということだ。
　解離性同一性障害――　かつては多重人格障害と呼ばれていた。その男はその障害の中の一つである”交代人格”であった。