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第6章 Reunion-再会-

　共に暮らしていくうちに、その女は徐々にだが男に心を開いていった。暮らしなんて他愛もない普通のものだった。朝にお早うという言葉と温かい朝食。そしてまだ学生だったその女を大学まで並んで歩いて送っていく。そして帰りにはその女に用事がない時だけは必ず迎えに行き、夕飯も顔を合わせながら食し、その後の余った時間にはテレビを見たり少しの会話をしたりの暮らしを続けたのだ。
　その女が最初に放った言葉はこうだった。
　あなたは私を傷つけない……？
　その言葉を聞いた時、男は泣きそうになった。あの男と一緒に暮らし始めたのは確か数年前だ。その女は今、大学四年生になっているから、正確にいうと三年半くらい。その間にその女はあの男にかなりのDVを受け続けていたのだろう。
　もちろん傷つけなんかしないよ――
　そう言うと、女は安堵した笑みを初めて男に見せたのだ。
　『ヒト』は幸せそうな表情をするととても魅力的だ。しかしいつもふさぎ込んでいるとそのような要素も外見からは感じられなくなる。男はその女に魅力を感じなかった。若かったにも関わらず、だ。しかし初めて見せた笑顔を見た瞬間、男の心臓に衝撃が走った。若さもある。しかしその女は元がそう悪くはなかったのだ。顔も体型も、そしてまだよく知らないから分からないが、恐らく性格も――。
　この首都に足を踏み入れた時は明るい未来を想像しながらだったのだろう。それが不運にも相手が悪かった。
　その女は段々と明るさを取り戻し、よく話すようになったし大学生活も充実したものになり始めた。身体の傷痕やリスカットの痕は消えはしないが、それはそれで女が辛い過去を乗り越えて、今度こそは幸せに暮らしていかなければならない証である。しかし、このような傷物の女を誰がもらってくれるだろうか？　それが幸せになり始めた後に生じた女の悩みであった。それを男に相談をしてきた。
　気にすることはない。そのような傷があっても、君のことを好きになってくれる男はたくさんいるよと答えても、女はいつも不安そうに両目を伏せていた。しかし女にはその悩みの要因がもう一つあったのだ。
　それは、子どもを産むことができないということであった。
　あの男と共に暮らしてから腹部を何度も蹴られ、殴られたのが原因なんだろう。どれほど容赦のない――　女の腹部内の子宮破裂により、全てを摘出する羽目になったのだ。