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第6章 Reunion-再会-

　そしていい女性だと感じてもらいたくて、気づいてもらいたくて……
　誰にでも理解されるような、物わかりのいい落ち着いた女性だと思ってもらいたくて……
　演じていただけなの――
　本当の私はこちら側。どうしようもない時にはこうして泣いて喚いて、相手を困らせるような器の小さなただの女の子だ。でもそこまでの言葉を出すことは許されなかった。なぜなら今、私は彼の胸の中で抱き締められているから。吐き出そうと思っていた長い言葉の代わりに私の口から呟き漏れたのは、
「どうして……？」
　何とも短い。私と同じ香りが彼の服から漂う。だって同じ屋根の下で暮らしているのだもの。洗剤だって柔軟剤だって同じものを使用しているから当然。でも、何故かそれがとても安心できて。
　お互いに一人じゃないってことを知らされる形を今、私たちはしている――
　背後から抱き締められたことはある。友人のマンションに行った時だ。あの時は私に友人の傷つけられた姿を見せない為に、行かせない為にした行動だ。でも、今は違う。力づくではなくてとても優しい。いいえ力強くはあるけれど、それは心地好いものだった。真正面から抱き締められたのは初めてで、恋愛には書物などの知識しか持ち得ない私にとってもどうしたらいいのか全く分からなくて、今はされるがまま。
「何か、こうしたくなった……」
　私の短い問いかけに、彼はこう答えてくる。理由は分からないけれど私を抱き締めたくなったということか。
「もしかすると、『ヒト』の方があなた達よりも”不完全”なのかもしれません。様々な感情によって心は大きくブレます。大人になるまで何度も反抗期を迎えます。それは大人に近づく証拠だって言われますけれど、その時期の『ヒト』の足元はとても不安定な場所にあります。『ヒト』って……」
　私は彼の胸の中に顔を強く押し付けてもごもごと呟く。
　もしかしたら、死を迎える時こそが”完璧”になるのかも――
「そんな話を聞いたら、俺も何を目指しているのかが分からなくなってきた」
「混乱させてしまってごめんなさい」
　謝る私の背中に回している両腕に彼は力を入れてきた。そのせいで互いの前身は更に強い密着を起こす。
「”完璧”ってのは、もしかしたら『ヒト』の格好のいいところばかりを学習するのではないのかもしれないな」
「えっ……？」
　彼の静かなその言葉に私が顔を上げる。