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第2章 ：Discomfort-違和感-

　たった数十年でこんなにも安定した暮らしを保障できるのだろうか？
　私が幼かった時にもよく見た光景が今はない。それは高齢者の姿を殆ど目にしなくなったこと。その代わりに働き盛りである三十路から四十路くらいの男女の姿がこの首都でも目立ち始めた。そして次に税金という制度がようやくなくなり、子どもの教育費が島国内全て無料化したことである。
　高齢者が一定の数に落ち着いたことについて、政府は島国民にこう伝えている。
　過去の高齢者と今の高齢者が過去に口にしていた食材の変化によるものなのだそうだ。質素でも栄養価の高い食材を口にしていた過去の高齢者。それに比べてその後の時代には海外からのファストフード店などの参入があり、魚や野菜中心であったこの島国の独自の食文化が徐々に薄れて肉中心になっていたことなどが原因に取り上げられている。それに添加物や加工物の取り過ぎなどにより、次々に新たな病がこの世に生まれ出た。それに対応すべく薬も開発されつつあったが、この島国は海外に比べて治療薬などの開発がかなり遅延して、多くの国民が命を落としたのも原因の一つの中にあると言う。ただ、その薬に関してはたった数か月で既に開発が進み、今では普通に治療薬として使用されているのだが、それについても釈然としないものがあった。税金が廃止されたことについては、国庫にかなりの余裕が出たと財務省から明らかにされた。説明によると、現総理大臣がかなり切り詰めた政策を行ったとされているが、その詳細ははっきりとしていない。しかし一つだけ財政に余裕ができた理由として当てはまるものがあった。それはこの島国を鎖国した時に、海外に進出していた島国の企業を全て国内へと戻し、税金は法人から納められているというものだ。国内に企業が増えれば雇用ももちろん増加する。人口が少なくなった為に無駄な空き家や土地を有効利用することによって、この小さな島国内でも大企業が大規模な工場や本社を築き上げることができたのだという。そして養育費の無料化が行われた後からは子どもの出生率が徐々に増加したという結果が公表された。
「総理大臣からの口からは出生率が増加したって言っていて、この記事には少子化が加速している……　意味が分からないわ」
「だからぁ！　ここの記事は信用できないって言っているじゃない」
「そうなの？」