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Eternal
第2章 :Discomfort-違和感-
 クラスメイトの男子に会うこともなく、どこに住んでいるのかも分からない。大学内で出会う男たちは皆、なぜか『A地区』の者ばかり。もう一つの地区の『E地区』の男にはこの首都に入って一年近くが経つが、一人も出会ったことがなかった。
 同じ島国中の者たちがどうして区分けされて暮らさないといけないのだろう?
 どうして――?
 私が抱く違和感はこの首都に足を踏み入れてから増々強さを増した。この会話の後から私とその男との間の会話はぷつりと切れて、無言のままで私が暮らすマンションの前に辿り着いたのだが、それまでの時間は長かったような短かったような曖昧さを残していた。
「送ってくれてありがとう」
 学生たちの為に建てられたというマンションの前で男の真正面に立って笑顔を向けながら御礼の言葉を述べる。そしてその後にこう伝えた。
「ねえ、私にキスができる?」
 すると男は驚いたような動きを私に見せた。それでも表情の中の笑みは続いたまま。それをとても異質なものに感じながら男の顔を真っ直ぐに見つめる。キスという言葉はしっかりと理解できているようだ。しかし驚いた動きを見せるだけで顔の中にある変化はない。
 普通なら今の私のように――
 何となく私の中では整理ができて理解できているのかもしれない。ただ、それが現実であるのだと考えたくないだけで、できれば私の思い過ごしでありますようにと願いながらも、キスという言葉を口に出すだけでもとても勇気が必要で恥ずかしかった私の顔はとても、とても――
「キスは、できるよ……」
 先ほどと同じ異音が男の内側から聞こえてくる。その音は先ほどの音よりも少し乱れているような気がした。
「だって、僕は君のことが大好きだから……」
 自分に言い聞かせるような男の言葉を聞いた私は苦笑を漏らした。
 愛している、じゃなくて大好きなのね――
 私よりも年上のはずなのに、なぜか男の知能が幼児並みに思えてくる。そしてとうとう男の唇が私のそれに寄せてきた。その距離が縮まる毎に私の両瞼は少しずつ落ちていく。
「キスをしたら君の答えが聞けるのかな?」
 唇が触れ合いそうな距離で男が囁くように言葉を紡いでくる。それを目閉じた為に視界が暗闇になった中で聞いた後に私は静かに答えた。
「キスができたら、ね……」
「つまり……」
 
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