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Eternal
第3章 :confusion-混乱-

「『ヒト』である女の卵細胞はこの島国では国宝級だ。特にこの『H地区』に住む女のそれは特にね」
「首都から出れば『ヒト』の女はたくさんいるじゃないか」
「でも、あれはこの『H地区』の女とは異なるだろう?」
「まあ、確かに……」
男は闇空に向かって大きく息を吐き出した。口元からは低い外気温の中でいきなり放出された透明の息が冷やされて白濁を露わにした。
「出自がはっきりとしている男女が交わりを行ってこの世に生まれた子どもは、体外受精をして人工子宮で成長する子どもとは全く異なる。研究者がいくら高精密な人工子宮を完成させても『ヒト』の女の自然創造物によるそれには敵わんよ」
この話を聞くのは初めてで、俺は男にどう違うのか、どう敵わないのかを質問する。すると男は全身を身震いさせてから車の方へと顎をしゃくった。会話に少し夢中になり過ぎたか、男が乗って来た車の他に、研究施設から手配されたワゴン車が既に到着していた。
まあ確かに、男の車に研究員とあの壊れた『モノ』を乗せるには無理があるだろう。研究員を乗せたのには、そのワゴン車がここに到着するまでにしなければいけない処理があったからだ。
男が顎をしゃくったのは、この場所で今の会話は不似合いだというような理由があったからだろう。いや、もしかすると単純に寒くて外に立っているのが限界だったのかもしれない。
男は研究員たちが『モノ』をワゴン車に乗せるのを見届けたと同時に、自分の車へ向かって足早に歩いて行く。その後を俺も続いて足を動かしていた。
車の中は閉め切った空間であって外よりかはまだ温もりがある。しかし長時間外に放ったらかしにされていた為、恐らくここに到着した時よりは車内の温度は確実に下がっている。男はここでも身震いを起こしてからエンジンをかける為のボタンを押した。
今この時代の車は全て電気で動くようになっていて、「ガソリン」という言葉は既に死語となっている。しかし男が言うには、「ガソリン」を利用して動く車の姿は、車好きにとってはとても魅力あるものらしい。爆音を鳴らして走るスポーツカー。過去にはそれでタイムを競うカーレースなるものもあったという。そのような過去を知らない俺にその男の車に対する価値観はよく理解できないが、話を聞いていれば何となく気が昂ぶるのは、やはりこの俺もこの男と同じで車が好きなのだからだろう。
「首都から出れば『ヒト』の女はたくさんいるじゃないか」
「でも、あれはこの『H地区』の女とは異なるだろう?」
「まあ、確かに……」
男は闇空に向かって大きく息を吐き出した。口元からは低い外気温の中でいきなり放出された透明の息が冷やされて白濁を露わにした。
「出自がはっきりとしている男女が交わりを行ってこの世に生まれた子どもは、体外受精をして人工子宮で成長する子どもとは全く異なる。研究者がいくら高精密な人工子宮を完成させても『ヒト』の女の自然創造物によるそれには敵わんよ」
この話を聞くのは初めてで、俺は男にどう違うのか、どう敵わないのかを質問する。すると男は全身を身震いさせてから車の方へと顎をしゃくった。会話に少し夢中になり過ぎたか、男が乗って来た車の他に、研究施設から手配されたワゴン車が既に到着していた。
まあ確かに、男の車に研究員とあの壊れた『モノ』を乗せるには無理があるだろう。研究員を乗せたのには、そのワゴン車がここに到着するまでにしなければいけない処理があったからだ。
男が顎をしゃくったのは、この場所で今の会話は不似合いだというような理由があったからだろう。いや、もしかすると単純に寒くて外に立っているのが限界だったのかもしれない。
男は研究員たちが『モノ』をワゴン車に乗せるのを見届けたと同時に、自分の車へ向かって足早に歩いて行く。その後を俺も続いて足を動かしていた。
車の中は閉め切った空間であって外よりかはまだ温もりがある。しかし長時間外に放ったらかしにされていた為、恐らくここに到着した時よりは車内の温度は確実に下がっている。男はここでも身震いを起こしてからエンジンをかける為のボタンを押した。
今この時代の車は全て電気で動くようになっていて、「ガソリン」という言葉は既に死語となっている。しかし男が言うには、「ガソリン」を利用して動く車の姿は、車好きにとってはとても魅力あるものらしい。爆音を鳴らして走るスポーツカー。過去にはそれでタイムを競うカーレースなるものもあったという。そのような過去を知らない俺にその男の車に対する価値観はよく理解できないが、話を聞いていれば何となく気が昂ぶるのは、やはりこの俺もこの男と同じで車が好きなのだからだろう。

