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Eternal
第3章 :confusion-混乱-
「あ、あの…… 今日は大学の講義がなくって休みでですねぇ…… さ、昨夜のこともあって、何と言うか疲れていたっていうか。そ、それにこんな朝早くに私の部屋に来るっていったら友人くらいなものでして…… ははっ……」
 そして最後に棒読みのような笑い声を放った私の次の言葉は――

「き、着替えてきますっ! お見苦しい姿を見せてしまって申し訳ありません!」
 彼に向かってお辞儀をしようと思ったのに、なぜか敬礼する仕草を起こしてしまっていた。
 彼には部屋に入っていてもらって、私は洗面所の中で着替えたり、歯磨きをして顔を洗ったり、長い髪の毛を手櫛で整えて括ったりとバタバタとしていた。そしてようやくどこから見られても恥ずかしくない姿に変えた私は洗面所という隔離された狭い一室から解放されたのである。
 彼がいる部屋に入った時、彼はちょうどフードとマフラーを首から外しているところであった。朝日が差し込む遮光カーテンの前でするその仕草に私は目を奪われた。なぜなら今朝の彼の仕草は昨夜と違って品というものが見られたからだ。フードの中に収められていた髪の毛が吸い付くような動きを見せる。それが朝日に照らされてキラキラと輝いた。そして外されたマフラーが滑らかなラインを描く手の中で丁寧に畳まれていく。そしてそれを持った片方の手に続く五指の中の一指には、昨夜私が巻き付けたあのバンドエイドがまだ――
 少し捩れを作ったそれを見た私の身体に昨夜感じた温もりがまた蘇った。
「軍隊にでも所属していたのか?」
「は、はいっ!?」
 陽光を背負った彼の顔がはっきりと見えない。その中で意味不明の質問を受けた時の私はぼんやりとしていて、彼のそれをしっかりと聞き取ることができなかった。
「軍隊にでも所属していたのかって聞いた」
「あ、ああ、軍隊ですか…… って、所属なんてしてませんよっ! あの敬礼を見て、どうやって所属したって思うんですか!」
「いや、何か慣れてるなと思っただけだ。下手糞だったけどな」
 と答える男の口元が何となくわざとらしい吊り上がりを見せている。そこで私はようやくからかわれているのだと実感した。頬を膨らませた後に男に背を向けた私は、台所の方へ向かって歩いて行く。そして電子ポットの湯沸かしボタンを押した時、背後で軋みある音が聞こえてきた。恐らく彼が部屋のソファに腰を掛けたためだろう。
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