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Eternal
第3章 :confusion-混乱-

が、これもまたちょっとした嫌味かしらと、口に出した後に言わなければ良かったと悩んでもみる。しかし彼はあまり気分を害したふうでもないようだ。私が淹れた熱々のコーヒーが入ったカップを手に取ると、その縁を口元へと誘う。その仕草もまた品があって私は目を奪われてしまう。
何だろう? どう言葉に表したらいいのだろうか。彼の外見は普通の大人の男を漂わせる。しかし内面から滲み出る何かは外面の見た目とは釣り合っていないように感じたのだ。
コーヒーを一口啜った彼が私の方に視線を向けてくる。昨夜は抜け出せない闇を感じさせた漆黒の瞳がなぜか穢れのない初心なものに見えてしまうのは、朝の光が気まぐれに起こしたちょっとした悪戯か?
見つめ合ったままで気の利いた会話も頭の中に浮かび上がらない。私はこのような時の話題の変え方を知っている。だからそうしてみた。
「えっと、今日は何かご用でいらっしゃったんですか? もしかして昨夜のことで何か取り調べとか?」
私の問い掛けを聞いた彼は切れ長の両目に微妙な動きを起こした。
「あっと…… 悪い、ぼんやりしていて聞いていない。もう一度言ってくれないか?」
そう言われて私は彼にもこんなふうにぼんやりとすることがあるのだと嬉しくなった。なぜなら昨夜は掌の熱で自分と同じだと確認はできたけれど、彼は完璧な大人の男なのだと決めつけていたからだ。今指に巻き付いているあのバンドエイドだって私と別れたらすぐに剥がすだろうなんて考えていたから、今朝この発見をして少しだけにやけてしまったのが彼にばれてはいないだろうかと気になりながら、同じ質問を彼に投げかけた。すると、
「ここに来た理由は……」
彼が私の顔から視線を逸らしたのが分かる。何か言いにくいことでもあるのか、それとも昨夜のことで何か不手際でもあったか、何か協力をしなくてはいけなくて取調室にでも連行されるのか…… 私の頭の中で生じる予想は全てが昨夜の事件絡みばかりだった。だからいきなり彼からある言葉が吐き出された時の私の顔は一体どのような変化を起こしていたのだろうかと、その前の不安とは違う不安を生じたのを今でも覚えている。
「お前が俺のものだから……?」
何、その疑問形の言葉は――
コーヒーのカップを持っていた手が脱力を起こして、手の中にあるそれを落としそうになりながらもなんとか持ちこたえる。
何だろう? どう言葉に表したらいいのだろうか。彼の外見は普通の大人の男を漂わせる。しかし内面から滲み出る何かは外面の見た目とは釣り合っていないように感じたのだ。
コーヒーを一口啜った彼が私の方に視線を向けてくる。昨夜は抜け出せない闇を感じさせた漆黒の瞳がなぜか穢れのない初心なものに見えてしまうのは、朝の光が気まぐれに起こしたちょっとした悪戯か?
見つめ合ったままで気の利いた会話も頭の中に浮かび上がらない。私はこのような時の話題の変え方を知っている。だからそうしてみた。
「えっと、今日は何かご用でいらっしゃったんですか? もしかして昨夜のことで何か取り調べとか?」
私の問い掛けを聞いた彼は切れ長の両目に微妙な動きを起こした。
「あっと…… 悪い、ぼんやりしていて聞いていない。もう一度言ってくれないか?」
そう言われて私は彼にもこんなふうにぼんやりとすることがあるのだと嬉しくなった。なぜなら昨夜は掌の熱で自分と同じだと確認はできたけれど、彼は完璧な大人の男なのだと決めつけていたからだ。今指に巻き付いているあのバンドエイドだって私と別れたらすぐに剥がすだろうなんて考えていたから、今朝この発見をして少しだけにやけてしまったのが彼にばれてはいないだろうかと気になりながら、同じ質問を彼に投げかけた。すると、
「ここに来た理由は……」
彼が私の顔から視線を逸らしたのが分かる。何か言いにくいことでもあるのか、それとも昨夜のことで何か不手際でもあったか、何か協力をしなくてはいけなくて取調室にでも連行されるのか…… 私の頭の中で生じる予想は全てが昨夜の事件絡みばかりだった。だからいきなり彼からある言葉が吐き出された時の私の顔は一体どのような変化を起こしていたのだろうかと、その前の不安とは違う不安を生じたのを今でも覚えている。
「お前が俺のものだから……?」
何、その疑問形の言葉は――
コーヒーのカップを持っていた手が脱力を起こして、手の中にあるそれを落としそうになりながらもなんとか持ちこたえる。

