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第3章 ：confusion-混乱-

　それまでの期間は約ひと月で、その動きが『ヒト』の大人と同じくらいになった時に、それらを包み込むように骨と皮膚が生成される。もちろん、容器に浸された液体も生成された細胞もその中の全ては無菌状態だ。そしてひと月の半ばになれば、容器の中には『ヒト』と同じ姿をした個体ができあがり、二月後にはその容器から出ることができる。その後は手術をした『ヒト』と同じようにリハビリ生活が数週間、この島国で暮らす為の知識を埋め込む為の教育が待っているのだという。
　先に伝えた無菌状態である彼らはこの首都から出ることができない。何の抗体や免疫も持っていない為だ。だから『ヒト』の女がこの首都に入る前には全身、持ち物全て念入りに消毒をされる。なぜなら、『E地区』の男に直接会ったり触れることができるのは『ヒト』の女だけだから。『ヒト』の女に会う時の『E地区』の男はまだ『ヒト』としては不完全な状態。しかし『ヒト』の女に出逢って会話を進める毎に『E地区』の男たちの全身も中身も進化を始める。そして触れ合うことで『ヒト』の女の中にある感染症などの免疫や抗体などを自身の中に取り入れることができて、最後には本物の『ヒト』として完成する。そうなった後の彼らは『ヒト』が何年もかけて得る高度な専門知識をたった半月ほどで身につけてしまうという。
「俺の身体の中で息づく細胞たちは、この島国で選りすぐりの『ヒト』のものだ。それを使って先ほどの説明の中にあった若くて優秀な逸材を完成させた。最終的なそれを、俺たちの間では"完璧"になると言う」
「完璧……」
　彼の説明はまだ終わりそうにない。その中で私の頭の中は多少の混乱を始めていた。
　細胞は成長をする。しかしこの無菌状態の中では老いることがないのだという。この環境が彼の身体の成長時間を止めているらしい。
「知識を得る能力は『ヒト』の数百倍、数千倍以上の速さを持っていると言われているが、感情などをこの身体に植え付けるのにはかなりの年月をかける」
　この研究を進めている研究者はこう言った。
　最終的に決まった答えが出る知識を得るのは容易い。しかし感情は答えがあってないようなものだ。その時、場所によってそれぞれのそれらは変化する複雑なものなのだから――