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Eternal
第4章 :jealousy-嫉妬-
「お前も警察機関で働きゃ良かったんだよ。何で研究所になんて志願したかね?」
「それは前にも言っただろ?」
「分かってるよ…… この島国から出ることが唯一できた男に惚れたからだろ?」
「惚れたんじゃないさ…… 俺は…… あの男の……」
 あの男がまだこの研究所にいたならば、恐らく先ほどの卵子の件は既に解決していただろう。しかし彼は、自身で成功させたそれのデータを誰にも教えることなく国外へと持ち去ったのだ。
「天才の中の天才だったよ」
「よほど素晴らしい細胞で造られたんだな」
「いいや……」
 俺はあの男を超えたいと思った。悪く言えば妬ましかった。なぜならその男は――


 セキュリティ解除をしてもいいという許可が出た為に、私はドアを開ける。と、そこには彼が立っていた。今日はマフラーをしていないが、コートのフードは被っていた。
 少し機嫌が良くないらしい。無表情に見えて、少しだけそのような感情が垣間見えた。
「いらっしゃい。何かあったんですか?」
 部屋の中に招き入れながら問う。と、彼は自分の頬を片手で撫でた。
「いや…… 何で?」
「え? ちょっと機嫌が悪いかなって思っただけだけですけど、違うのならいいんです」
 私はそう言って彼がいつも腰を下ろすソファの方へと誘った。そろそろ彼が来るだろうという予感がしていた私はつい先ほど淹れたコーヒーを彼が腰を下ろしているソファの前のローテーブルに置く。毎回同じく、静かに丁寧に――
「淹れるのが速いな」
 彼がコーヒーカップの湯気を見つめながら呟く。それを聞いた私はクスリと笑って答えた。
「いつもこれくらいの時間に来るから、今日もそうだろうと思ったんです」
 彼は私のその言葉に驚いたようだ。
「これを、おもてなしっていうのかしら? 心遣い?」
 私が顎に手を当てながら考え込むように言うと、彼は先ほどの不機嫌な雰囲気を消して、柔らかに微笑んだ。
「これは恐らく、『ヒト』にしかできないことなんだろうな」
 細胞から作られた未完成である彼は、そんなことを考えたこともないしされたことも一度もなかったと、少し悲し気な笑みに変化させた。そのような彼は背高だし体格もいいし、見た目は完璧な大人に見えるのに、なぜか今の私の瞳には頼りのない少年のように見えた。
 私は彼の隣りに腰を下ろすと、彼の頬を両手で包み込んで自分の方に向けさせる。


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