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第4章 :jealousy-嫉妬-

　まだ彼女と会ってから四日しか経っていないのに、今まで起こらなかった感情が少しずつ身につき始めている気がした。しかし、俺の命が誕生してから後のリハビリ施設で研究者は俺にこう伝えていた。
　教育的な知識は『ヒト』の数百倍ほどの速さで吸収するが、感情だけは複雑でそれを取得するまでには『ヒト』がそれをするよりもかなりの速度が落ちると。それなのに、俺はこの四日間でかなりの感情を身につけているような気がする。が、恐らく、感情という種はかなり膨大な数に至るのだろう。だから俺がたくさん得たと思っているこれは、まだほんの一部分にしか過ぎないのだ。
　コーヒーを飲むと既に冷めていて、かなりの時間が経ったのだと気づく。その間にも彼女の話は続いたが、最終に近づくにつれて、俺は驚きを隠せなくなる。
「その男性は友人に『A地区』出身だと伝えていたんですが、私にはどうも『E地区』出身しか見えなくて、それに未完成の男性じゃなくて完璧に近いような感じを受けたんです」
「『E地区』出身？　完璧な男？」
「ええ……」
「どうしてそれが分かった？」
　俺が問うと、彼女は人差し指を顎に当てて、何かを思い出すかのように天井を見上げた。
「勘もあるんですけれど……　多分あの『A地区』出身だった男性と同じように口元を見たんだと思います」
「口元？」
「はい、あの……　白い息のことです。『A地区』の男性はこの寒さの中で呼吸をしていても白いそれが出ていなかったから」
　つまり、ミスコンの男の口元からは白い息が吐き出されていたのだ。その前にその男は嘘を吐いているのではないかと疑問に思い、口元から吐き出された息の白さを見て彼女は確信したのだろう。しかし、これは犯人を特定しやすい。『E地区』の完璧になった男の人数は数少ないし、その男たちのナンバーはちゃんと別のファイルに保存されているからだ。
　主要メンバーを捕縛すれば、陰でその集団を操っているボスの面子もすぐに割れてこの事件は早く解決しそうだ。俺はそう考えながら彼女に伝える。
「出逢いは皆一緒の時期には行わない。俺たち各々がいいと思った時に会いに行く。だから、あんたの友人も心配することはない。近いうちに会いに来ると思う」
　俺のこの言葉は彼女を安心させただろうか？
　顔を見て俺は安堵の溜め息を吐く。
　彼女の表情からは、今の俺と同じく安堵の色が見て取れたから――。