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Eternal
第4章 :jealousy-嫉妬-
「よく眠っていましたね」
 上半身をソファに沈み込ませた後もうつらうつらしていたようだ。再び意識を戻した時、目の前のローテーブルの上には湯気の立つカレーライスが乗った皿があった。
「カレーライスを作ってみたんです。良かったらどうぞ」
 美味そうな香りに呼応するように俺の腹が盛大な音を立てる。それを聞いた彼女が声を立てて笑った。こういう時は謝るべきなのかと咄嗟に思い、
「わ、悪い」
 という言葉を口から吐き出すと、彼女は笑い声を止めて首を傾げた。
「別に謝ることじゃありませんよ。誰だってお腹が空いたら音が鳴りますよ」
 そう言ってツツッとカレー皿を俺のもう少し前へと押し出す。
「は、初めて作ってみたんですけど、味見をしたらなかなかの出来で……」
 顔を真っ赤にさせながらの仕草と言葉に何とも言えず、俺はどう返答したらいいのかも分からず、ただただ促されるままにスプーンを手に取ると、目の前のカレーを一口分掬って口に運ぶ。その動きを目の前の彼女は動きを停止させたままずっと凝視していて、ずっと見つめられているのがこんなにも恥ずかしいものなのだと初めて思った。そして、そういえば自分も初めて彼女と会った時にこんな風に見つめていたと気付き、彼女もまた同じような思いをしていたのだろうと理解した。
 口の中でスプーンの上からカレーライスが舌の上へと乗せられる。そしてゆっくりと咀嚼する。少しピリッとしてとろみのある液体が喉元へと滑り落ちる。
「美味い……」
 口元から自然と放たれたその言葉に、俺自身も驚いた。カレーライスの具は店で出されるものやスーパーで売られているレトルトものと違って何とも不揃いな形をしている。それはそうだろう。さっきも彼女はこう言ったのだ。
 初めて作ったと――
 根菜の中にも少し歯ごたえのあるものやすぐに崩れてしまうものもあった。完璧な料理を求めるものなら、このカレーライスは落第点を与えられるだろう。しかし今、料理とは完璧でなくてもいいと気付く。そして見目の美しさなども要らない。味はそこそこでいいのだ。口の中に入れて美味いと思えばいい。それに俺は今まで料理に対してこのような温かみを感じたことがなかったのだ。
 心の中にじわじわと染み入るような温もりは『ヒト』だけしか周りに与えることができないものなのかと、俺の中で妬みのようなものが沸き起こった。
「良かった……」


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