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Eternal
第2章 :Discomfort-違和感-
 私の問い掛けに少し困惑したような表情を浮かばせて短く答えた。
 数え切れないほどの訪問をしても懐かない私。別れの時間がくれば毎度のことながら、母親と呼ばれる女性の両の瞳にはいつも弱々しい光が浮かび上がっていた。
 私はこの島国で「小学生」と呼ばれる年代になるまで、大自然の中で大いに身体を動かして遊んだ。この歳になるまでの子どもは自由にさせるというのがこの島国の方針らしい。もちろん、その間に文字と数字を覚えることや簡単な勉学の知識だけは強制的にさせられたが、ほぼ遊びの時間の中のほんの少しの間だけのその勉学もどきは、私にとってとても楽しい時間でもあった。しかし、このような幼い頃の私にも、ほんの一瞬だけ違和感を持ったことがあった。
 両親である男性と女性がある時を境にぱったりと姿を見せなくなったのだ。
 最後に彼らと顔を合わせたのはいつであっただろうと私は思い出す。
 そうだ、あの時だ――
 私は過去の記憶を手繰り寄せる。
 最後の最後に私はようやく彼らとの距離をほんの少しだけ縮めていた。縮めたといっても、お互いの間には少しの隙間があった。しかし、私にとってそこまでできたのは大した進歩であったし、彼らも喜びを隠せないように別れるまで笑っていたのを思い出したのだ。その時に彼らにこう言われた。
 一緒に行こう――
 どこへ? という言葉を口にすることができなかった。
 なぜだろう? あの時の私の口からはその言葉を決して出してはいけないような気がしたのだ。その言葉を発した時の彼らの表情を見たからなのかもしれない。
 何かに追い詰められていたような、切羽詰まったような余裕のないそれを見た瞬間、私は小さな頭の中でこう思ったのだ。それも無自覚に――
 ああ、この人たちはきっと、どこか遠くへ行こうとしているんだろうなぁ…… だから笑いながらも私を見つめる瞳は涙で濡れているんだ。
 彼らは私に向かって手を差し伸べてきた。この時、私の親代わりをしてくれている人は傍にいなかった。いつもは傍にいるはずのその人がいない時を狙って、彼らは私にそう伝えてきたのだ。恐らくこの会話はその人に聞かれてはいけないものだったのだろう。
 幼かった私は彼らが悪者になってしまうのは嫌だった。だからただ、私は彼らに向かって小さな頭を静かに横に振るだけに留まったのだ。
 
 
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