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Eternal
第4章 :jealousy-嫉妬-
 しかし彼は私の言葉の内容の奥深くまで把握していなかったようだ。
「それなら……」
 正月前に引っ越してはどうかと彼は提案をしてきたのだ。その方がゆっくりと正月が過ごせるのではないかと――
 彼がまだ未完成の男性で良かったと私はホッと胸を撫でおろしながら、それはいい考えですね、なんて返事をしたと同時に、彼は人差し指を耳に当てた。
「●●不動産へ繫いでくれ」
 そして正月を迎える二日前に引っ越しの予定をさっさと決めてしまっていた。彼のこのような迅速な行動に私はただただ感服するばかり。というか、時間とか気にしていない? って思ってしまう。『ヒト』である私たちは、営業時間とかを気にする。昔から眠らない街首都と言われていても、時間と共にそして気にしながら過ごすのが『ヒト』だ。こういうところが彼と私の異なるところだろう。
「十二月三十日の午後、引っ越し業者がここへ来るから用意をしておいてくれ」
 不動産業者とのやり取りが終了した彼は人差し指を耳から離し、私に日にちと時間のことを伝えてくる。この時に私は二日後には同じ場所で彼とこれからずっと過ごすことになるのだと気付いて、胸が異様な震えを起こし始める。ようやく収まっていた頬の赤みも再発したようで、私の首から上は燃え上がるように熱い。
「また頬が赤い」
 彼がそう言って私の額に掌を当てようとする。その仕草をするのにかなり接近をしてきた為に、私は咄嗟に身を後ろへと引いた。最初は首を傾げた彼。しかし記憶力が半端なくすごい彼は、私の頬の赤みの意味をすぐに察したようだ。意地悪するように更に端正な顔を私にわざと近付けてきた。
「ちょ、ちょっと、近いですって!」
「近い? さっきよりはまだ近くないと思うけど?」
「い、いえいえ、同じくらいに近いですって!」
 もう最高潮に頬が赤くなっているのが分かる。熱せられすぎて頭から湯気が出てきそうなほどの高熱だ。私はその熱をこれ以上上げられたくなくて、顔を俯かせながら彼の胸を両手で押し返すと、私の掌に彼の心臓の音が響いて流れてきた。
「あ……」
 自分の鼓動は確認できても、他人の鼓動なんて長らく聞いたり感じ取ったりしたことがなかった。鼓動があるのが当たり前だと思っていたのだから、わざわざ確認をすることなどなかった。
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