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第4章 :jealousy-嫉妬-

　彼女が叫び声をあげた理由が微かながらに理解できたような――。そして俺はぼんやりとながら過去の記憶を思い出し始めていた。
　セックス専用ロボットはあの行為をする為に作られたものであるし、そりゃ、胸を触ろうが尻を触ろうが、セックスをする前から触れる承諾を得ているようなものだから俺たち男もいちいち確認をすることはない。しかし『ヒト』の女性を相手にする時には必ず同意を得ないといけない。セックスをしてもいいという承諾の確認を必ず取れ。そうでないと強姦などの罪に問われるぞ。相手はいつもお前たちが相手にするようなロボットではないのだからな。
　この話をしてくれたのは俺の養育者であり教育者であった男だ。その男は俺の前で自分の胸に拳を当てた。
　ここで鼓動を打ち鳴らす者たちは様々な感情を持っている。この島国ではまるでロボットのように扱われている節はあるが、お前も含めて私たち『ヒト』は何に関しても同意のもとで動くことを忘れてはならないぞ。お前はまだ希薄ではあるが『モノ』とは違って感情を持つ『ヒト』だ。いくら細胞の寄せ集めだとしても、その細胞は『ヒト』から提供されたものなのだからな。多くの知識と『ヒト』の心の機微に触れなさい。
　なぜならお前は――
　男の声がここで止まる。いや、俺が独自でそこからの記憶を停止させたのだ。その間も目の前の男の唇は揺れ続いていた。
「いいか？　『ヒト』の女の身体に触るのには承諾がいるんだぞ。まあ、無言のそれもあるけれどな。お互いよく理解し合ってからだと抱きしめたい時にそれができるし、キスをしたい時にはそれもできる。しかしお前、今は駄目だぞ。さすがに早すぎる」
「分かっている。別にさっきは触りたいと思ってやったんじゃないから」
　あの男の話の記憶が俺を苛つかせ、思わず少しだけだが声を荒げてしまう。
　この小さな部屋の中ではかなり小さめの声音でも少し離れた相手に話している内容が聞こえてしまうものだ。それなのに俺は荒げた声を出した。だから今の言葉は彼女にはっきりと聞こえてしまったはずだ。
「おい！」
　男が俺の口を片手で押さえつけてくる。しかし既に口元から放たれた言葉が俺の口内へと戻せるわけがない。男が彼女の方をチラ見する。俺の両目も目の前の動きに促された。