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第4章 :jealousy-嫉妬-

　本当に知識でしか理解できていない。でも、これからはそのような答えを言わずとも自然と頭の中で理解できるようになるのだろう。
「そうです。出会いの時や別れ際、お互いの好意を示す為に使われる行動です」
「確か握手を拒否するのはエチケットに反したり、敵意を持っているという意味を表したりするんだよな？」
「まあ、そうですね。相手にはあまりいい気分を与えない行動です。握手もその場その場で色々な意味を持ちますから、一概に私が言っているような意味ばかりではありませんけれど、一般的な意味はそれになりますかね」
　私がそう答えると、彼はふん……　と小さな頷きの二言を呟く。そして少し考えるように私の差し出した手をじっと見つめていたが、ようやく彼も自分の片方の掌を私のそれに重ねてきた。
「握手は握る力が強いほどいいんだよな？」
「いえいえ、それにも色々な意味が含まれますよ。好意的な時もあるだろうし、逆に相手を挑発したりと嫌がらせの意味に取られたりもします」
「握手一つの行動にもそんなに意味があるとは、難しいな……」
　彼の盛大な溜め息を聞いた私が笑うと、目尻に残っていた涙の一粒がこれで最後と言わんばかりに頬を伝った。
「また泣いているのか？」
　彼は私の頬に握手をしていない方の手を添えながら静かに言葉を投げかけてくる。
「これから、よろしくな……」
　短い言葉だけど、それだけで今の私は胸いっぱいで、
「こちらこそ、よろしくお願いします」
　と、乾いた涙の跡で引き攣りを起こしている頬を思い切り持ち上げるように口角を上げた。握手している二つの手はなかなか離れない。少し揺らしたり緩めたり強めたり――　ちょっとした変化をつけながら、まるで二つの手に握手という行動を飽きさせないようにするかのように。
　今夜、私は彼とちょっとしたいざこざになって、それが解決して更に新しい発見をして――　最悪だったけれど、最後には幸せな気分を味わっていた――。