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Eternal
第4章 :jealousy-嫉妬-
 無機質な建物の内部で鈍い水音を掻き混ぜるような音が響き渡った。その音の中に苦しそうな呻き声も混ざっている。
「うぐっ、がっ! あああっひっぃぃっ!」
 悲鳴の中に時々唾液を喉に詰まらせる音。それでも鈍い水音は止まない。その後一つの音が建物の中から止む。
「はあ、これも駄目か」
 水音を止めた男が残念そうな溜め息を放つ。
「もう少し生きていてくれていれば、新鮮なものが取り出せたのに。全くこんな脆弱な『ヒト』の女のどこが国宝級なのか分からないな」
 そして傍にあるたくさんの手術器具が乗った台の上に赤く染まったメスと子宮内部の何かを掻き出したのか、この島国の昔から使用されている鈍ヒを放り投げる。
 カチャンカチャンと音が二度ほどなった後で、ナイロンが擦れ合うような音がしばらく続き、それが止んだ後に男の呟きが建物の中で木霊した。
「原始的な方法でしか成功しなかっただって? だからこうしてあんたが残していたほんの少しのデータの言葉を解析しながらやっているのに、なぜ失敗ばかりなんだ。これでは僕の研究材料がなくなってしまうじゃないか」
 男は分娩台の上で仰向けになって息を失くした女の口元から猿ぐつわを外すと、両脇にある鉄棒のベルトも外し、拘束していた手首を自由にしてやる。そうやってももう暴れることはないのだが、まあつい先ほどまで苦しめさせた少しの償いというか、息のないものを拘束していても意味がないというか、用済みというか――。
「美しく包めたんじゃないか?」
 醜く歪んだ顔や下腹部の残酷な状態が見えないように、暗色のナイロンで死体の全てを包み、ナイロンテープで簡単に外れないように慎重に留めながら、男の顔の中にはそれに対する満足げな笑み。そして傍に置いてあったコートで身を包むと、それを分娩台から自分の肩へ担いで無機質な建物の外へ出る為の準備を始める。
「やあ君たち、もう少し待っていてくれ。順番に研究の手伝いをしてもらうからね」
 建物の外へ出る前に、男はナイロンで包んだ死体を肩に担いだまま、防音ガラスの中に閉じ込められている上に、恐怖の色を顔に纏った女たちに笑顔を向ける。防音ガラスの中だから、実験の時に放たれる材料の悲鳴や足掻き、断末魔のような叫びなどは聞こえない。しかし、その中から一人、また一人と消えていく仲間。
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