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Eternal
第4章 :jealousy-嫉妬-
 薬品臭い匂いは彼女のマンションには不似合いだと俺はずっと思っていた。それにこれはエチケットだとも。
 この島国の研究開発は進んでいると言われてはいるが、俺はそうは思わない。意外と原始的な研究も存在している。本当にこの島国は何もかもが進んでいるのだろうかと疑問に思うことも多々あった。世界など見たことがないから比較はできないが、今のところは島国の権力者の言葉を信じるしか他ない。それ以外、俺たちには信じる術がないのだから。
 住まいに入るといきなり雨が酷く降り始め、俺は窓から外を覗きながらラッキーだったと呟く。
 雨は嫌いだ。それ以上に雨に濡れる自分が好きではない。それはあの日のことを思い出させるから。
 あの男が消えた日、俺は偶然にあの男と出会った。俺の養育者で教育者でもあった男は首都を出る用意をしていた。理由は地方の研究機関に移動になったと言っていた。しかしその言葉は嘘だった。男はその日を境にこの島国から姿を消していたのだ。記憶を呼び起こしたくはないのにどうしても脳裏に鮮やかな映像として雨の降る光景とあの男の姿が映る。
「こういう日は外に出るのも億劫になるんだけどな」
 シャワーを浴びてから再び窓の外を見てみると、先ほどよりもかなり強い降りだ。俺はバスタオルで髪の毛をわしゃわしゃと拭きながら呟く。
 彼女には毎日行くと約束をした。それは必ず守りたい、雨は嫌いでもだ。でも何だろう? このそわそわとした気持ちは……。
 彼女との約束は義務のようなものだと自分に言い聞かせてみるが、どうやら俺の中のもう一人の自分はそうではないと言い返しているような気がする。
 ただ彼女に会いたいんだろう? 彼女を一人にすると心配なんだろう?
 もしも彼女が心変わりでもしたら――
 心の声の最後の言葉の途中で俺は耳を塞ぐ。
 過去に何度もあったという『ヒト』の女の心変わりという現象。一応、首都に入った『ヒト』の女の相手になる『E地区』の男は決まっている。しかし、決まった相手とから突如、他の相手に気持ちが移ってしまう女もいたのだそうだ。その相手は必ずしも『E地区』の男に限られてはいない。『ヒト』の男は油断のならない生き物だと俺もその話を聞いてそう思う。善人面をしていて裏では何を考えているのか分からない人種だ。それの細胞から俺は誕生した。
 そう、自分が完璧になるには彼女を手放してはならない。
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