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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第2章 愛のバルカローレ
いつも通りに食堂で夕食を済ませ、下級生の寄宿棟の部屋の点呼に立ち会い、見回りをする。
下級生のリーダーから報告や相談などを受けているとあっという間に消灯時間だ。
先にシャワーを済ませ、寝間着に着替えていると、和葉が戻ってきた。
掲げたランプに照らされたその貌は、息を飲むほどに美しい。
…美の神様があらゆる情熱を注いで作り上げた最高傑作の人間の貌を体現しているような…そんな美貌だ。
「今年の下級生は可愛いな。なにかと言うとすぐに相談に来る。今夜もやたら纏わり付かれて困ったよ」
美しい貌に釘付けになる伊織と対照的に和葉は、普段と変わらずに朗らかに雑談する。
「…そうか…」
自然に笑いかけるのに失敗して、伊織は憮然とした表情で机に向かう。
「何?まだ勉強するの?」
甘い花の香りが背後から漂う。
温かい吐息が耳を掠める。
「…いや…」
振り返る伊織を、和葉は背後から柔らかく抱きしめた。
「…今、シャワー浴びてくる。待ってて…」
艶めいた声に体温が一気に上がる。
「…ああ」
返事すら上擦り、固まる伊織に優しい微笑みを送ったのち、和葉は浴室に消えて行ったのだった。
下級生のリーダーから報告や相談などを受けているとあっという間に消灯時間だ。
先にシャワーを済ませ、寝間着に着替えていると、和葉が戻ってきた。
掲げたランプに照らされたその貌は、息を飲むほどに美しい。
…美の神様があらゆる情熱を注いで作り上げた最高傑作の人間の貌を体現しているような…そんな美貌だ。
「今年の下級生は可愛いな。なにかと言うとすぐに相談に来る。今夜もやたら纏わり付かれて困ったよ」
美しい貌に釘付けになる伊織と対照的に和葉は、普段と変わらずに朗らかに雑談する。
「…そうか…」
自然に笑いかけるのに失敗して、伊織は憮然とした表情で机に向かう。
「何?まだ勉強するの?」
甘い花の香りが背後から漂う。
温かい吐息が耳を掠める。
「…いや…」
振り返る伊織を、和葉は背後から柔らかく抱きしめた。
「…今、シャワー浴びてくる。待ってて…」
艶めいた声に体温が一気に上がる。
「…ああ」
返事すら上擦り、固まる伊織に優しい微笑みを送ったのち、和葉は浴室に消えて行ったのだった。