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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第2章 愛のバルカローレ
思いがけない強い力で手が引かれ、伊織はベッドに倒れこんだ。
「うわっ…!」
驚く伊織に、和葉が馬乗りになる。
両手を掲げられ、伊織は目を見開いた。
「…え?…俺…そっち…?」
弾けるように和葉が笑い出した。
お腹を抱えて笑い転げる和葉に、伊織は唖然とする。
「あはは…!…さすがに僕も自分より体格の良い男を抱く趣味はないよ。
…ああ、可笑しい…」
「…和葉…俺を揶揄っているのか?」
さすがにむっとした伊織に、和葉は目を細めると、添い寝をするように横たわる。
「違うよ。
…本当は僕も緊張してる…。
自分から好きになった人と寝るのは初めてだから…」
「え⁈…お前…それって…」
…和葉はもう男と寝たことがあるのか⁈
伊織は狼狽した。
和葉の琥珀色の瞳が、やや寂しげな色を帯びる。
「…うん。嘘はつかないよ。僕は、伊織が初めてじゃない。
男も女も…何人か経験してる。
…幻滅した?」
咄嗟に首を振り、堪らずに和葉を胸に抱き込む。
「幻滅なんかしない。しないけれど…」
…悔しい。俺が和葉の初めての相手じゃないのが、悔しい。
理不尽だって分かってるけど、悔しい…悔しい…。
そいつらを殴り倒したいくらいに悔しい…悔しい…。
そう耳朶に低く囁く。
じっとしていた和葉が、伊織の胸で小さく呟いた。
「…こんなこと、言うのも変だけれど…嬉しい…」
貌を上げ、微笑った瞳は宝石よりも輝いていた。
「嫉妬してくれて嬉しい。…それから、伊織の初めての相手が僕で嬉しい。すごくすごく嬉しい。
…ごめんね、僕ばかり嬉しくて…」
「なんだよ、それ…」
険しい貌も、和葉の美しい微笑みに暖められた砂糖菓子のように蕩けさせられる。
「…たらしはお前だ…」
伊織は凛々しい貌を不機嫌そうに歪めながら、和葉の唇を奪った。
それは甘い…蜜よりも甘い口づけだった。
「うわっ…!」
驚く伊織に、和葉が馬乗りになる。
両手を掲げられ、伊織は目を見開いた。
「…え?…俺…そっち…?」
弾けるように和葉が笑い出した。
お腹を抱えて笑い転げる和葉に、伊織は唖然とする。
「あはは…!…さすがに僕も自分より体格の良い男を抱く趣味はないよ。
…ああ、可笑しい…」
「…和葉…俺を揶揄っているのか?」
さすがにむっとした伊織に、和葉は目を細めると、添い寝をするように横たわる。
「違うよ。
…本当は僕も緊張してる…。
自分から好きになった人と寝るのは初めてだから…」
「え⁈…お前…それって…」
…和葉はもう男と寝たことがあるのか⁈
伊織は狼狽した。
和葉の琥珀色の瞳が、やや寂しげな色を帯びる。
「…うん。嘘はつかないよ。僕は、伊織が初めてじゃない。
男も女も…何人か経験してる。
…幻滅した?」
咄嗟に首を振り、堪らずに和葉を胸に抱き込む。
「幻滅なんかしない。しないけれど…」
…悔しい。俺が和葉の初めての相手じゃないのが、悔しい。
理不尽だって分かってるけど、悔しい…悔しい…。
そいつらを殴り倒したいくらいに悔しい…悔しい…。
そう耳朶に低く囁く。
じっとしていた和葉が、伊織の胸で小さく呟いた。
「…こんなこと、言うのも変だけれど…嬉しい…」
貌を上げ、微笑った瞳は宝石よりも輝いていた。
「嫉妬してくれて嬉しい。…それから、伊織の初めての相手が僕で嬉しい。すごくすごく嬉しい。
…ごめんね、僕ばかり嬉しくて…」
「なんだよ、それ…」
険しい貌も、和葉の美しい微笑みに暖められた砂糖菓子のように蕩けさせられる。
「…たらしはお前だ…」
伊織は凛々しい貌を不機嫌そうに歪めながら、和葉の唇を奪った。
それは甘い…蜜よりも甘い口づけだった。