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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第2章 愛のバルカローレ
「…いらっしゃいませ。和葉様。お久しぶりでございます。さあ、どうぞこちらに。
瑞葉様はサンルームにおられます」
…その男は、昔と少しも変わらずにひんやりと冷たい…しかし目が覚めるほどに端正な美貌に如何にも儀礼的な微笑みを浮かべ、和葉を出迎えた。
離山にある篠宮伯爵家の別荘を事実上一人で取り仕切る彼は、東京の屋敷にいた時と寸分違わぬ完璧な執事の制服を長身の恐ろしくスタイルの良い身体に纏っている。
かつて篠宮家のメイドや侍女はおろか、屋敷を訪れる来客の淑女や婦人たちの胸を密かにときめかせたその彫像の如く端麗な美貌は全くもって健在であった。
「八雲、久しぶりだね」
和葉が笑いかけると、その瑠璃色に近い美しい瞳を見開き、ほんの少し温かみを感じさせる笑みを返した。
「はい。和葉様がお元気でいらっしゃるか、いつも案じておりました。
…相変わらず、お綺麗でいらっしゃいますね」
「…そう。ありがとう」
そんな言葉はお世辞だと分かっていても嬉しい。
…なぜなら、篠宮家のかつての執事、八雲は和葉の初恋のひとだからだ。
瑞葉様はサンルームにおられます」
…その男は、昔と少しも変わらずにひんやりと冷たい…しかし目が覚めるほどに端正な美貌に如何にも儀礼的な微笑みを浮かべ、和葉を出迎えた。
離山にある篠宮伯爵家の別荘を事実上一人で取り仕切る彼は、東京の屋敷にいた時と寸分違わぬ完璧な執事の制服を長身の恐ろしくスタイルの良い身体に纏っている。
かつて篠宮家のメイドや侍女はおろか、屋敷を訪れる来客の淑女や婦人たちの胸を密かにときめかせたその彫像の如く端麗な美貌は全くもって健在であった。
「八雲、久しぶりだね」
和葉が笑いかけると、その瑠璃色に近い美しい瞳を見開き、ほんの少し温かみを感じさせる笑みを返した。
「はい。和葉様がお元気でいらっしゃるか、いつも案じておりました。
…相変わらず、お綺麗でいらっしゃいますね」
「…そう。ありがとう」
そんな言葉はお世辞だと分かっていても嬉しい。
…なぜなら、篠宮家のかつての執事、八雲は和葉の初恋のひとだからだ。