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いつかの春に君と 〜 番外編 アンソロジー集〜
第2章 愛のバルカローレ
やがて暇乞いを告げた和葉に、八雲は
「私が駅までお送りいたします。
こちらで少しお待ちください」
そう言い、そのまま瑞葉を引き締まった逞しい腕で恭しく抱き上げた。
車椅子も常備しているが、八雲は瑞葉をあまり乗せたがらない。
移動の時は必ず、自らが瑞葉を抱くのだ。
「瑞葉様、お部屋でお待ちください。すぐに戻ります」
白い絹の裾の長いクラシカルな衣服を纏った瑞葉を軽々と横抱きに抱き、その瑠璃色の瞳で甘く囁くその様は、さながらお伽話の端麗な騎士と美しくも儚げな姫君のようだ。

「…和葉、身体に気をつけてね。
また、きっと会いにきてね」
瑞葉は八雲の腕の中で、煌めくエメラルドの瞳にやや恋しげな表情を浮かべて、綿菓子を溶かしたように甘く微笑んだ。


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